観光と民宿の関係

 民宿の概念規定をする場合、観光との関連において把握することによって、成立条件をうまく整理することができます。まず個別研究として、観光論の研究者であるマリオツティの「観光経済学講義」から学ぶことにします。
 マリオツティは、観光の本質を経済現象に主体をおき、経済学的理解を試みたのです。この要約を分類すると次のようになります。
 静態的な観光 - ある特定時点のホテル事情の調査
 動態的な観光 - 観光客移動の比較研究
 滞在の経済 - 地域の評価・ホテルなどが研究対象、職業教育
 旅行の経済 - 宣伝・組織(通信・運輸・料金など)などの研究、統計調査
 観光産業 - 商業的秩序による投機的活動
 観光政策 - 国家主義的刻印をもつ観念的なもの
 観光吸引中心地の理論 - 自然的諸条件(芸術的・考古学的・風土的および保健的)自然発生的吸引力、人為的諸条件(施設・慰安・ホテルの組織などといったような下部構造と有機的結合)派生的吸引力このような分類についての根本的思想について「資源のみにたよらず、それと同じウエイトを接遇に与え,両者のバランスのとれた観光地の意義を強調したことは注目すべきである。こうした有形・無形の観光的魅力を有機的に結合させることを彼は後年になって、有機的結合と称しています。
 彼の思想は観光学界の指導的立場としてうけとめるならば、社会科学として思考し、現象から本質へ、本質から現象への理論形成をしています。つまり科学としての「観光」を思考しています。従って実践的な応用科学的な面がありうるのです。それには諸科学の分析にたよらなくてはならないのであり、境界線上の科学として成立するためには自然科学と社会科学の統一によってはじめて科学たらしめるのです。そのためには 研究者はまず問題意識(認識目的)・実在(認識対象)・方法(認識手段)の相互関連に目を向けるべきである。としている点を私達は理解していかなくてはなりません。いずれこしても「観光」は総合的な科学によって成立しうるわけであるから、本研究において「観光」という概念をマリオッティにおくならば、民宿は人為的条件による範ちゅうに入り、有形の観光的魅力に入りうるのです。また「有機的結合」の科学として民宿をとらえるならば「観光民宿」が存在しうるのです。そして、そこにおいて「有形財」の提供によって「無形財」の需要の比重がいちじるしく上昇し、合成財として市場に提供するサービス として高く評価されます。
 このことから、一般的な商業市場で取引される商品とは異にしているのであり、特殊な商品形態をなしていることになります。この商品の提供する業務が一般的にいう宿泊業であり、民宿も同様な形態をもっていることになります。ただし、季節的変動があり、収益性も低く文化活動としての民宿形態をもった学生村のような特殊なものを筆者は観光民宿とは区別して提うべきではないかと考え、学生村民宿としました。従って、民宿を大別して観光民宿と学生村民宿とします。

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 以上のように民宿を経済性からみた場合、学生村民宿のような文化活動的性格をもち経済的収益の低いものがあります。しかし、経済性は低くても一定の場において、なんらかの利益を得るための利益活動体として把握した場合、企業的性格をもっているといっても過言ではないでしょう。従って、民宿を一つの経営主体として考えるならば、観光民宿、学生村民宿ともに企業的性格をもっているのです。
 もちろん経営的に企業概念をとらえるならば、ちなみに経営学の企業の概念を述べなくてはならない。そこで経営学における企業の意義について藻利博士のものによると次のように説明しています。「企業はおのずから資本主義社会における商品生産の事業体にはかならないことになる。」としています。従って、企業として商品生産をするには設備投資もしなくてはならないし、もし投資をすれば、利潤を得なくてはならない。ところが、民宿経営者は比較的安易に考え、経営労働を安易に安く見積る傾向にあります。この点で他の宿泊業と相違がみられます。
 民宿利用者にとっては、他の宿とかなり違った、家族的サービス、土地柄に合った良さ(物質的な面や精神的なサービスも含む)があり、気安く、料金が安い等の利点を得ることになります。そのようなことから民宿経営の利点として、とくに経済的な面から把握すると、次の3点になります。「施設、設備は現存の施設・設備を利用する。労働力は自家労働でまかなう。食料品は自給自足する。」
 つまり、季節的剰余労働力の利用ができる。例えば、農業従事者が民宿業を営む場合、長閑期にその民宿営業を行うので、労働力確保の面からしても経済的で、副収入が得られることは一石二鳥の営業ともいえます。
 設備投資が不要または少額である。本来、民宿営業は自家の遊休施設の利用であって、営業の為の設備投資は不要であるか、必要であっても少額であるべきです。ホテル業、旅館業が設備投資に多額の資本を必要とし、固定資産比率が高く経営を苦しくしているのと対照的です。
 自家生産物の提供ができる。民宿経営者は第一流産業従事者が多く、自家で生産された生産物を客に提供できることは、サービス原価を安くすることになり、また、有効に高い価格でみやげ品として販売することもできる。」としています。
 しかし、以上の点については今後の研究をまたねばなりませんが、民宿経営を楽観的にとらえ、利点のみ説明しています。必ずしも利点ばかりでなく、前述ことごとく、転換期がせまられているところも実態調査から明白になっています。民宿の概念規定をするにあたって、作業仮説として考え、思考してきたのですが、「観光」との関連から結論ししなくてはなりません。「民宿」は一般的に専業でなく、兼業として成立しています。つまり副業として、自家の部屋等を来前者に提供し、その対価として金銭を得る営業であって、現代の民宿業は観光客を主体に宿泊させることから、観光民宿といい、文化活動を主体とする学生村のような経営形態の民宿を学生村民宿とよぶ。そして民宿を経営主体の形態でとらえるならば、なんらかの商品生産をしている事業体にほかならない。つまり企業として研究対象とし、経営学的方法によって、利潤極大化をいかにしていったらよいか研究するものです。

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