民宿の環境立地

 民宿の立地については、環境立地と民宿施設機能立地に大別されます。そこで、この両者について、実際にどのようになっているか分析するとき、顧客である観光客を主体としてみた場合、観光対象物であり、諸価値の実現の対象物となりうります。従って、反対に供給者としてとらえた場合、観光資源となりうります。この資源論については諸説があります。しかし、ここでは立地の諸条件としてとらえ、観光産業的視点より、むしろ民宿経営立地としてとらえていくことにしました。ただ、観光資源としての種類を自然性の大きなものから人為性の大きなものへと6ランクしている大阪府立大のものを参考にして種類分けしてみました。そして、この実際の諸条件を種類分けする場合、「民宿オールガイド」に出てくる説明の諸条件を整理してみました。

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 その結果は、日本全体をみた場合、第1位は「釣り」の1,021件、第2位は「行事・祭等」の813件、第3位は「味」、つまり民宿で出す特別な料理のことで641件となっています。第4位は「湖水浴・海水浴」の636件、第5位は「ハイキング」の526件となっています。ただし、「ドライブ」は除きました。その理由は、この「民宿オールガイド」に「ドライブ」と特記されているので集計したのであって、特記してないところは、数件でした。従って、津々浦々までマイカーで旅行できることを意味しています。
 以上のような分析結果から明らかなように,純粋な自然的条件より、人為性の大きいものに立地的要素のウェイトが置かれていることがわかります。そして観先客自身の行動ないし運動によって、反対給付がともなうような種類にウェイトが置かれていることが明白となっています。これは、とりもなおさず、民宿の立地条件を考える場合のキーポイントではないでしょうか。
 このような結果に対して、都道府県別第1位立地条件の内訳では「釣り」が最も多く33件、ついで「湖水浴・海水浴」の5件、「行事・祭等」の4件で、あとは1件ずつとなっています。このように1位だけの立地条件をみてみると、民宿の立地主体の条件ではなく、観光客のレクリエーションに立地主体が置かれていることが明白となった。このようなことうら、日帰り客の増加をきたし、交通立地が整備されることにより、ますますこの傾向は激しくなることを示しています。
 次に,観光民宿と学生村民宿との関係を検対しておきましょう。前者はスキー単独型、スキー主導型、登山、ハイキング型、スポーツ型、海水浴単独型、海水浴主導型、観光型、その他型をさし、後者はそのままです。
 しかし、現実の民宿を主体にした環境立地を考えた場合、この立地条件がばらばらに立地しているのではありません。つまり、自然と人間が巧みに調和して、個性ある町、個性ある地域をつくっているのであって、その地域が長い間育んできた、地域の「文化」とか「伝統」をつくりあげてきたのです。そして、この「文化」「伝統」によって「風土」というものが形成されてきたのでしょう。このようなことから、伝統、つまり工芸文化等のものがとりあげられていないし、民宿との直接的な結びつきのないのが、このデータの欠陥でもありうります。従って、そこに具現されているところの、地域特性というものの把握はもちろんのこと、評価もなされていないのです。多大の時間を費して評価の手法を考えたデータも過去にある が、ここでは、民宿の立地の実際との関係からみた場合、歴史的に土地利用がなされてきたのであって、むやみやたらに自然利用をしてきたのではないのです。
 現在、地域化して、とり残されたようにみえる文化遺跡が、十分光をあびていないでいることもあります。その文化遺跡にして払今まで地域住民が楽しんでいた余暇空間の場であったのです。それに、○○狩りといわれるようになった現在、かつては地域住民の遠足のコースであったり、魚とりの場であったり、わらびとりの場であったりしたところであることを忘れてはなりません。つまり地域住民の余暇利用地が、いつのまにか都市開発のために、他からの住民移動によって、自動車場ができたり、ゴルフ場になったりして。地域の住民の憩いの場が、一つずつオフリミットになってしまうことが、民宿とのかかわりにおいてどうなっているか、このデータから知ることはできません。
 もともと民宿は地域住民の民家であって、観光のための場でなかったのであるから、自然との調和によって成り立った住民の生活の場であったことは間違いないのです。その自然が観光資源化してきたのは都市化によって、都市生民が地域住民の憩いの場を利用し、育んできたことにより、はじまったものが民宿の本来の姿でした。それが、いつのまにか観光化していくのです。従って、従来は、都市化によって、日常生活の貧困から「施設」と「飲食」をもとめて旅行したのであって、民宿の素朴さなるものが、観光化の一要素であり、立地条件でした。そこには、一般民衆の心のふれあいの場があり「真実」な姿があったのです。
 最近はこのようなことでは十分ではありません。観光レクリエーション施設が利用者に十分な満足を与えるにはどうしたらよいかを考えて、施設のサービス・飲食サービス・人的サービス・環境サービスが満点の状態で考えられ、民宿の水準がかつての旅館なみになってきているのが事実です。そこには、旅行者が「施設」と「飲食」の差をもとめる結果となり、旅行者の日常生活の充実度の差をもとめる結果ともなっている。これは本来の民宿ではなかったのではないでしょうか。やはり「人」と「環境」に力を注いで、「施設」「飲食」は必要最少限にして、都市化の進行のなかで得にくいものを提供していくことが大切ではないでしょうか。つまり、環境立地を考える場合、このような点を考えていくことが大切であるし、同時に、民宿立地は自然的条件や人為的な条件によっても変化していくことを忘れてはならない。長野県白馬村細野の例では、かつては村全域が住民の居住地であったのが、最近は、観光資源の影響によって住民の生活の場が立地移動してしまったのです。つまり民宿の立地移動がなされたのです。また長野県の阿南町新野の学生村民宿では、かっては町道で自動車の往来がやっとであったころは道路の右側であったものが、モータリゼーションによって、道路の幅を広くし、直緑化したことによって、自動車の交通量が多くなり、騒音に悩まされて、学生村が山ぎわの左側の斜線部分に立地移動したことを示しています。
 この他、立地として、観光客から見た環境立地について検対してみましょう。まず、日本全体における「宿泊旅行の参加率の推移」については昭和47年をピークにして、やや減少傾向を示しており、昭和51年と昭和53年とを比較すると2.1%の減少となっています。このうち大・中都市が減少傾向を示し、小都市がやや増加し、町村が派少しています。
 次に「観光旅行実施月の推移」についてみてみると、7、8月がとくに多く、5月、10月がそれぞれ,やや多いといった傾向を示しています。
 旅行目的については「宿泊観光旅行の目的の推移」によると、「慰安旅行」の減少にともない「体育運動」「見物・行楽」「保養・休養」悩それぞれ増加傾向を示しています。
 このデータの他に「行き先」について特徴をみると、東北への旅行は自動車保有者が多く、九州はその逆の傾向を示し、「慰安旅行」で中部地方「スポーツ」で甲信越「神仏詣」で関西、「湯治」で東北、「避暑」で関東などが目立っています。
 この宿泊観光旅行の目的を性別・年齢別にみると、男の20代で「スポーツ」、30代で「趣味・研究」のため、40〜50代で「慰安旅行」、60代以上で「湯治」が多い。女では30代の「避暑」、35〜45歳の「自然・名所・スポーツなどの見物・行楽」と幅広いのが目立っています。
 次に「宿泊観光旅行の利用交通機関の推移」についてみると、利用交通機関の種類は鉄道が48.1%と約半数を占めていますが、昭和51年度と比較すると、鉄道とバスの利用が激減し、自家用車利用がふえています。この傾向は、たびかさなる値上げによる鉄道ばなれの傾向を示しているものと思われます。
 次に「利用宿泊施設」については、「旅館」の43%、「ホテル」の23.5%が主なもので、「知人・親せき宅」の10.2%、「民宿」の8.9%で、民宿は4位です。昭和51年度の調査結果は「旅館」46.7が「ホテル」23.8%「知人・親せき宅」10.1%「車・船中泊」8.1%「民宿」7.4%となっており、民宿を比較してみると、やや利用者が増加したことを示している。そして、昭和51年度の報告書には、興味深いこととして、利用率の高い4層までを性別・年齢層別に調べていることです。
 イ)旅館を最も利用するのは高年齢者。
 ロ)ホテルを最も利用するのは、30代、40代であり、しかも男の方が多い。
 ハ)知人・親戚宅を最も利用するのは、20代後半から30代、しかも女の方が多い。
 ニ)車・船中泊を最も利用するのは10代および20代前半。
 ホ)民宿を最も利用するのは、10代、20代の男が中心となり、20代前半の女がこれに次ぐ。
 このように民宿は、10代、20代の男、女は20代前半となっており、宿泊施設としては、高年齢層になるに従って、旅館、ホテルを利用することが特徴的といえます。このようなことから、宿泊施設に対する旅行者の立地としてとらえよう。
 次に「宿泊観光旅行の行き先での行動の推移」についてみてみると、性・年齢別立地が考えられ、分析結果からみると「男・女共50〜60代に名所・旧跡をみたり、祭り、行事などをみるものが多く、また70歳以上を含め、温泉浴をあげるものが多い。旅行回数の少ない層で、自然・風景をみる、都会見物、温泉・海水浴をあげるものが多く、旅行回数の多い層で、スキー、登山、ハイキング、釣り、水泳、ゴルフ、テ二ス等、スポーツをあげるものが多いとしています。また、観光旅行における宿泊施設のすごし方として、「土産品店をのぞいた」の49.2%、宿舎の周辺を歩いた」の48.5%、「宿舎の中で静かに過した」の40.7%といった静的行動がみられます。
 このようなことから、いかに自然的立地条件に左右されるかがわかります。この状況と関係してくることとして、旅行回数との関係が問題になります。
 次に、「慰安旅行」については、年間における旅行回数が少ない人ほど目的とすることが多く、遂に、旅行回数が多い人は「見物・行楽」や「体育運動」に目的が分散しているのが特徴です。
 つまり慰安的な旅行は静態的ともいえ、見物・行楽的な要素をもち、どちらかといえば動態的な旅行目的の方が回数が多い。そして観光旅行の希望目的については、実績と大きな差はない。また「行き先でしたい行動」については次に示したようになっています。そして、それは「自然・風景をみる」の64.7%で実績をかなり上回っているし、「名所・旧跡をみる」の58.1%で実績をかなり上回り、温泉浴も38.3%,「ドライブ」の13.3%「祭・神仏詣」の12.3%「季節の花見」の11.7%といずれも実績を上回っていることがわかります。
 以上の宿泊客を対象にした立地条件を検討したのですが、全体的に動的傾向より静的傾向が強く、自然的条件に左右されることが明白となりました。そして、施設としては自然的傾向より人為的傾向に強い傾向を示していることがわかりました。このようなことから、どちらかといえば動的傾向を示しているのです。従って、この傾向は日帰り客の観光レクリエーションの誘発との関係で考えていかなくてはなりません。

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