民宿の実態

 長野県の民宿は古くからあり、日本を代表するともいわれています。その発展過程はいろいろですが、農業と観光とを結んだ新しい地域構造に根ざしている点はみのがすことができません。
 長野県は、一般に農業地帯であり、北部の積雪地帯にあっては古来から高冷地のため豪雪があり、氷雨もしくは他の作物による単作地帯です。そのためか、現金収入源がなく、経済的に豊かとはいえない状態でした。
 ところが、積雪地帯のためスキーが可能であったり、農山村の美しい自然景観などの自然的条件に恵まれ、それを積極的に働きかけ、利用していこうという一つのあらわれが、民宿を営もうということになります。そして良家が積極的に民宿を営むようになり、地域住民も民宿の発展に協力するようになり、住民自らも経営に参加するものもでてくるようになりました。

スポンサーリンク

 さらに民宿に対して、市町村の行政的な面で、地域経済へ大きく寄与するということから、僻地振興対策の一環として、積極的な民宿振興対策を打ちだしてきています。
 とくに戦後の長野県は、民宿の発展が大きく、昭和34年、643戸であった民宿が同37年には1,014戸と倍近くの伸びを示し、さらに同41年には2,040戸と7年間に3倍強の伸び方を示したのです。これは、長野県下の全旅館数に匹敵するものであり、旅館との競合関係の強くなったことは事実です。
 長野県全体の民宿の成立条件をみると、自然的条件によるものが多く、スキー、登山、スケート、学生村(合宿も含む)、自然景観、冷涼な気候などとなっています。このうち、最も多いのがスキーヤーを主とした観光民宿で、白馬村の場合がその代表的なものです。そして北アルプス一帯から戸狩、黒岩、野沢、菅平にいたる北信山麓一帯のいたるところに展開しています。
 最深雪時の積雪量1メートル50以上で、12月下旬から3月下旬までの最低根雪期間が3ケ月以上を保つ全国的にも有数の豪雪地帯で、水田単作という土地利用の低さもあり、農業所得も低く、長い冬ごもりの生活の中に、みの、内山紙、あけび、竹細工等や杜氏などの副業や季節的出かせぎにこって現金収入を求めており、裏日本的な良策経営地帯に分布しています。これも長野県の特徴ともいえます。
 また、長野県は地形的特性から標高600メートル以上の地域が多く、いわゆる高冷地農業を営んでいる所が多く、標高650メートルから800メートル以上の冷涼な気候地域で営まれている農業を高冷地農業と規定していますが、このような地域に学生村が多く分布していると説明されています。
 すなわち年平均気温10度の等温線が1月の零下2度線と8月の23度とほぼ一致している高冷地帯であるとしています。
 このような最暖期(8月)の気温が23度の地域は、場所によって標高が異なりますが、戸穏、野尻地方で650メートル、大町、白馬地方で700メートルの等高線が高冷地と低暖地とを区分する指標となっており、県南部地方では800メートル以上の高地が高冷地農業と考えられ、学生村の分布はに一致しているとしています。 このようなことから、学生村を主とした民宿は、大都会のわずらわしさや汚された空気を避けて勉学、あるいは運動に専念するためにやってくるようになったのでしょう。従って、スキーヤーを対象とするのが冬期であるのに対して、夏の冷涼さを求めるのが学生村民宿となるでしょう。
 これらの等温線により気温の低い高冷地では水田は一毛作、畑作は一年一作または二年三作となっており、土地利用は低く、農業面では火山灰性土壌のため、主穀農業を営んでいて低所得であり、冷涼性という自然的条件を商品化し、経済効果を高めようとしてきたと指摘しています。そして、昭和41年の民宿分布図と気象条件を等高線によって示してみると、東信地方の浅間山麓・蓼科山麓・美ケ原山麓・伊那地方の高遠町周辺・新野高原周辺・その他聖ケ岡高原・鬼無里高原等に広く分布し、学生村を形成しています。
 このように、長野県には広範囲にわたって民宿が分布し、歴史的にも早くから成立し、経済状態の如何とは別にして、かなりの戸数が戦後増加の一途をたどったことを意味し、経済成長と無関係ではなく、地域経済に大きく影響してきたことは事実であり、農業との調和、経済との調和を保ちつつ民宿は発展してきたのです。しかし、注意しなくてはならないのは,農業があくまでも主体であったことと、地域によって発展の過程が違っていることです。つまり、現象的にはみな異った形態で民宿が発展してきているが、本質的には共通するものがあると思われます。この実態を調査することによって明白になるのではなかろうかということではじまったのが、長野県、白馬村民宿であり、ついで飯田,下伊那地方の学生村民宿であり、八ケ岳山麓、千曲川源流沿い民宿であり、東信濃の民宿であり、奥信濃の民宿・木曾路の民宿です。

田舎暮らし

民宿の経営/ 民宿の概念/ 旅館業法と民宿/ 観光と民宿の関係/ 民宿の意義と方法/ 民宿の立地/ 民宿の施設機能/ 民宿の環境立地/ 宿泊機能を中心とした民宿の立地/ 民宿立地の一般理論/ 民宿の実態/ 長野県白馬村民宿/ 民宿の問題点と将来性/ 学生村経営の問題点と解決策/ 民宿経営の基礎概念/ 民宿経営の歴史/ 民宿経営の種類と形態/ 民宿の労務管理/ 民宿の情報管理/ 地域社会と観光創造におけるメリット/ 地域社会と観光創造のデメリット/