民宿経営の基礎概念

 民宿という言葉は古くから用いられていますが、それが日常的な用語的意味から発展して、いまだ学問的専門用語としての意味をもつに至っていません。従って、民宿が学問的研究たらしめるには、対象と方法の統一であり、一つの経験対象を如何なる認識対象として選ぶかです。
 ところで、経験対象である民宿経営はグーテソベルグもいうように、経営事象の経済的側面である。経営経済に関する学問であると限定したい。つまり、民宿経営の木質と概念を明確にすることです。そして、その考察により存在法則の発見であり、その在り方を明らかにして、政策,実践(応用)に役立たせることです。
 このようなことから民宿の概念をもう一度検討することにより明白になることと思います。民宿は一般的に専業でなく、兼業として成立しています。つまり副業として、自家の部屋等を来前者に提賎し、その対価として金銭を得る営業であって、現代の民宿業は観光客を主体に宿泊させることから、観光民宿といい、文化活動を主体とする学生村の経営形態の民宿を学生村民宿とよぶ、つまり民宿経営は営利生産経済のみに限らず広い生産経済の組織体と解することができます。
 そして、専業よりは副業として、自家の部屋等を来前者に提供する。全く家族の生活を目的とする生業もしくは家業として考えることができる。しかし、多くの経営学者が指摘するように、このような経営形態が企業でないとする見解もあります。
 つまり、このような見解は、資本家的企業観により企業概念を限定しているのに対して、零細経営である生業・家業であっても営業して、その対価として金銭を得る行為は企業概念として把握せられうるものと考えられます。
 従って民宿を経営主体の形態でとらえるならば、なんらかの商品生産をしている事業体にほかなりません。
 企業としての民宿を研究対象として、経営学的方法によって、利潤極大化をいかにしていったらよいか研究するものです。
 つまり、自家の部屋等の資本投下により収益(営利)を目的として追出せられ、また、それに資本が投下され、その投ぜられた資本を運用することにより価値あるものとして生産し、売却し、資本の回収と利益獲得に努めると同時に、消費的な経済から計算的に独立して生産経済の組織体として解するならば民宿経営も企業として把握できるのです。

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 民宿経営は生産経済の組織体であり、それは統一思想によって指揮される経済的組織体です。そして民宿経営という組織体を構成する要素はいうまでもなく、人的構成要素である人間の労働(家族労働)と物的構成要素である物財(施設・設備)とです。
 この場合メレロウィッチもいうごとく、経営の中心には人間が立つのであって、物財は技術的補助手段である。
 つまり、前者は物財要素の所有者であり、経営管理者に関する研究であり、後者は物財要素としての調達・運用がどのように生産に作用しているかなどを研究するのです。
 具体的には,民宿の家族労働ならびに季節的労働に対する精神的ならびに肉体的経営労務の問題であり、近代経営における経営組織の発展にかんがみ民宿経営管理に発展することになります。
 また、民宿経営に必要な物財要素については、経営環境も重大な要素です。とくに民宿の場合、有形財としての施設・設備に対する需要よりも「無形財」の供給に重大な要素をもっていることです。
 とくに、後者の要素については自然性から人為性への割合の強いことがわかっています。この、要素に対する人為的管理が必要である。と同時に、人為性の強い経営環境にするために調達せられた資本の運用形態としての経営財務が生産に作用してきます。すなわち、民宿経営に必要とする質本の調達・運用こそ、最も大きな比重のかかっていることはいなめない事実です。
 以上のように民宿経営を人的要素と物的要素の二面的に把握してきたのですが、それは、あくまでも民宿経営を主体的に考え、企業として、また本業としての立場をとることによって、このような経営形態が成立しうるのです。しかし民宿経営の歴史を考察した場合、必らずしも本業としての民宿経営でなくて、副業としての民宿経営であることを忘れてはなりません。従って、民宿経営の本質を究明する場合、単なる現象形態の変化にとらわれていて,本質的な面をみのがしてはならないのです。
 つまり、長野県白馬村の農業の経営形態を把握した場合、本業である農業は稲作で、つねに副業として麻栽培から養蚕へ、そしてタバコ栽培から民宿業へと転化してきています。本来ならば,本業としての位置づけられるところですが、経営的諸要素に重点が置かれているが故に経営形態の不安定化を生じ、つねに本業の安全弁と化し経営形態の二重構造を呈し、経済の二重構造的性格を露呈しているのです。
 このように本業と副業との位置の移動は、生産経済の主体性か客体性かの問題です。そして、この両者の関係は、生活主体者としての生業もしくは家業に中心が設かれることによって二重形態として把握されるのです。この二重形態としての民宿経営が旧来からの経営形態であるとするならば、麻栽培も養蚕もタバコ栽培も共通していることは、季節的物財管理によって二重形態を露呈してきたのです。
 しかし、この季節性か通年性かという期間によって本業か副業かを区別することができるならば、稲作は通年して栽培が可能でないから、この点から矛盾してくるのです。やはり、収益性・安全性・成長性(継続性)の原則によって可能になってくるものと思われます。
 この大きな問題を我々は無視するわけにはいかないのです。
 そして旧来の民宿経営は季節的物財管理によって人間の労働を考えずに物的経営を主体化したものが民宿経営であったと結論することができます。
 従って、近代的経営に基づいて考えるならば、人間の労働と物的要素の二面からとらえていかなくてはなりません。
 ただし、経営環境については、民宿を主体的に考えた場合、民宿そむのものも環境の一部であることから狭義的把握がなされ、民宿内部的経営となり、施設・設俺等の研究と労働に関する研究の両面が包含されうることになります。従って、民宿内部的経営に対して民宿外部的経営の研究は異なっており、民宿内部的経営以外の経営要素として研究されうることになります。
 つまり経営環境を広義的な経営概念とするならば、狭義的な経営概念は民宿を主体にした概念に一致してくることになります。

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