民宿の労務管理

 経営学では局知のように経営という概念と管理という概念の相違は明白になっています。前者は組織体の意思決定活動であるのに対して、後者は決定された意思に基づく執行活動です。具体的には、前者は組織体の基本方針および目標の決定であり、最高経営者が行うのです。後者は経営者によってきめられた経営方針を実現するべく活動で、生産労働を担当する作業活動と方針および目標の達成を合目的的かつ効果的にならしめる活動である。すなわち計画、執行、評価です。
 ところで民宿経営という場合、広い意義では経営環境として把握し、これを広狭二義に区別して、民宿活動を主体的にとらえる場合、民宿内部的経営といい、本来的な活動であり、狭義的経営環境といいます。
 それに対して、民宿の外的諸条件を考慮した経営を民宿外部的経営といい広義的経営環境に包含されうります。従って、民宿内部的経営の組織体の意思決定活動と執行活動を研究することが民宿経営管理であり、狭義的経営環境になりうります。それと同時に民宿外部的経営の場合も組織体の意思決定活動があります。
 しかし、この民宿外部的経営自身も主体的経営を行っているのですが、ここでは民宿経営を主体的に把握するのであって、相互補助的な立場に立ってこそ民宿外部的経営になりえます。
 すくなくとも本来的な民宿経営である民宿内部的経営を検討する場合、人間の労働を中心にしての民宿労務管理と物財管理を中心にした財務管理と、これ以外の情報についての管理を情報管理とし、筆者は民宿の経営管理を三分類して各論を展開します。そして各部分、つまり労務、財務、情報においては、計画し、執行し、評価することになります。

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 民宿経営の二重構造として民宿内部的経営と民宿外部的経営との関係より民宿の労務管理を考えなくてはなりません。両者の異なる経営構造に対して、共通な立場に置かれるのが小経営における作業的労働です。つまり、一方では農業、商業、鉱工業、その他サービス業を営みながら、他方では民宿経営を行うということになります。この両者を、ほとんどの場合、家族の労働をもって必要を満たしています。いわゆる経営体の中から求める内部調達型であり、そこには二重構造が露呈されてくる原因が内包されているのです。
 ところで民宿経営が、その労働要素を経営内部に求めることによって、すくなくとも内部調達利益が生ずるからです。
 一人経営もしくは独立経営の利点をあげることが可能となったので、とくに、その内で、民宿経営における精神的努力に期待する経営であり、自己の事業として、あるいは家族の事業として参加する経営であることを指摘しておきましょう。
 この結果は当然にして一般の被用者に見られない利害打算を超越した熱意と努力とを期待しているからです。そして労働費用が比較的低廉であることを忘れてはなりません。
 つまり民宿経営者や家族による労働は普通の労働報酬以下である場合が多く、ときには無償です。
 このように自己労働を低廉に評価することによって、民宿経営を成立させようとする特徴をもっています。それに民宿外部的経営との関係から両者の板ばさみに合って、過労になりがちな主婦労働があることを忘れてはなりません。
 さらに家族労働で不足してくる部分を外部調達しなくてはなりません。この場合、常用と臨時的雇用との場合がありますが、民宿経営の多くは、後者の場合が多く、パートタイマーやアルバイトの活用が多い。
 このような人的不足を早急にカバーするのが民宿経営の特徴ともいえるわけで、季節的、繁忙期のみに補充し活用することが最も大きな条件ともなっています。しかし経営が安定してくることによって、常用する場合がでてきます。
 これは、すくなくとも民宿経営者との労働者との間の雇用契約にもとづき賃金、その他の給与、労働時間、住居その他のいわゆる雇用条件にともなって,労働者と使用者は対等の立場で決定すべきものとされています。
 ちなみに民宿経営者は労働者の国籍、信条あるいは社会的身分によって賃金、労働時間、その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならないものとされています。
 次に民宿経営が、その必要とする労務を経営外部から調達する場合、その方法として縁故や紹介などによって非組織的に個々に求めることがあります。しかし、短期間に多数の人を要する作業労働の調達については一般の労働市場を通じて求められるのです。
 その方法は周知のように職業紹介施設による方法と募集による方法です。
 また労働市場を通じて供給された労働を直接経営目的達成のために自己の経営内において養成しなくてはなりません。ただ民宿経営において必要な事柄は長期にわたって養成する必要はないので短斯的に自己の経営の要求する内容と形式とに合致するように補導を行なえば足るわけで、経験的方法でよいでしょう。
 最後に賃金もしくは給料については、すくなくとも市場価格を基礎として支払うのが現実的な方法でしょう。ただし、原則的な問題は労働基準法に定められているので詳述しませんが、規模が小さくても健康保険、厚生年金、雇用保険、退職金制度など、この他労災保険も加入することによって、外部労働対策ともなり、近代的な民宿経営にもつながり他企業と同等に経営発展を望むことができます。もちろん給与、償与については規程を作成する必要があるでしょう。
 以上のような労務管理の諸条件を考慮して民宿経営を行うと同時に、前述のごとく民宿経営の二重構造を改善していくことが急務です。そして、それにともなって民宿経営の合理化を行い、経営者の主体的に新しい経営理念を身につけ民宿労務管理を行い、古い民宿経営理念からの脱却が望まれると同時に経営の民主化も当然考えていかなくてはなりません。

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