地域社会と観光創造のデメリット

 まず第1に民宿経営は四季の自然的条件を基礎資源としているので自然的条件に左右されます。そこで他の要素を加えて通年性重視と自然破壊のない開発と自動車公害のない観光開発が望まれます。
 第2に学生村の場合、宿泊者としての学生の質変化にともない経営方法の改善をしないと参加村や宿泊施設の増加がみられても学生の利用数が年々減少している傾向にあります。このように客の変容にともない経営方法を変化させていかなくてはなりません。

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 第3にレジャーブーム、モータリゼーションにより客の団体化が生じ、経営も大規模化したところが有利ですが、その反面、集中化による労働力不足と子供の教育に悪影響を及ぼすことになります。とくに勉強室が客室に転用され、その上、客の一時的解放からの消費的動機は子供達の悪習慣をまねくことになります。このような実態を解消するためには計画的な施設利用と学校教育にあっても観光と家庭教育の検討を要し、今後の研究課題となるでしょう。
 第4にケーブル等の観光施設による外来資本は直接地元に還元される量が少なく、地元資本と競合関係にたち、常に摩擦を生じる要因となっています。そこで地元資本の育成のために補助金、助成金等を出して援助すべきであるし公的な施設不足を市町村単位でなく県全体で考えていくべきです。そして、どの村にも施設のワンセット化して、その負担が大きいので、近隣の市町村単位に合同化して協同ないし共同利用していく、バランスのとれた自治体の活動こそ、地方の時代のカラーを出すことができるし、その中で独自性を創造していくことが不可欠ではないでしょうか。
 第5に民宿経営に経費がかかりすぎているし、将来は農業、漁業、林業などに依存する割合が高いことから、収支についての考え方が甘い面が見られます。そのあらわれともいえるドンブリ勘定会計がそれです。民宿経営によって、どれだけ収益があって、将来計画はどのようになるか、つまり家計と民宿経営の脱皮こそ真の民宿経営になり、家庭ないし家事労働の社会化につながるものと思われます。別の言葉でいえば、サービス産業化への第一歩を踏み出すことになるのではないでしょうか。近代的経営への道は、あすの若者達の魅力につながり、過疎化対策となっていくものと思われます。そして、財政的効果をあげて、地元資本の定着化をはかり、若者の魅力づくりが急務と思われます。
 以上について長野県の民宿経営を土台にして諭じてきたのですが、他の都道府県にあっても同様の傾向があるでしょう。事例研究を多くすることによって、より一層、この問題点が明白になり、あすへの経営に役立つものと思います。
 国や地方公共団体が、ひそかに開発して自然破壊と指摘され中止した例、隣接県が観光開発をして長野県の自然を借景して(他県がのぞき見して)観光資源としている例、斑尾高原のように二県にまたがっての開発のためペンション、ホテルは新潟県に位置し電力の家屋配線は長野県、送電は新潟県、そのため庭先の電柱が折れても地元長野県では修理できないとか、保健所は新潟県保健所で検便等の検査を受けるとか、教育面では地元の飯山市に入学させたいために地元のある地区に仮り住所を置かなければ入学できないとか、電話料金、架設料金が高いこと、郵便物は配達しないし、ガス料金は高いといった多くの問題をもっています。つまり、行政的に開発したにもかかわらず、運営面にいたると、非常に形式的で人間性を無視した行政指導になっています。もっと人間性尊重の立場から行政指導をすると同時に行政の組織の再検討が急務と思われます。
 観光開発により生活苦が明白になり,ますます若者の魅力を失う結果になっています。つまり、観光客の解放的なムードと旧来からの村での生活の差が目立ち、生活苦が目に見えてきます。その上に、道路が出来たから小学校も本校に通学する。地元から町に出るムードができてきで、町での文化的生活に水準を合わせるために田畑の収獲物での生活形態から、他に労働力を提供しての収益を得る形態が生まれてくる。そして、より収益を得るために出稼ぎに出る。その結果、核家族より小さい単位の家庭ができ、生活の基盤が山村から町に出る移動型のムードにより若者は都会にあこがれる。そして過疎化を招来する。これが信州の場合、伝統的な立身出世と結びつき、ますます激しくなります。結果は過疎化と外来資本による別荘分譲地が生じ、固定資産税で村の財源の6割以上も補う手段をとる。また軽井沢町のように一時的、季節的な消費者、つまり別荘利用者の地元に対する人間関係がうまくいかない例もあります。その上、自然破壊が生じた上ゴミ等の処理の問題も生ずる。このような実態から、より科学的な分析をし、計画的な行政と市民の論理による科学の研究が急務となるでしょう。
 観光開発のアナウンスメント効果として土地の高騰があります。農業用地が空地に転用されたり別荘になったりする。農業はますます第二次兼業化に移行し、農業生産の危機ともいわれます。工業用地の問題としてはスプロール化防止による規制問題があります。しかし観光開発は未だ問題となっていません。もっと広域的に観光開発を考え、農業問題を行政的に検討することを望みます。

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