河川保全区域の指定と制限

河川法五四条は、河川管理者が河岸または河川管理施設を保全するため必要があると認めるときは、あらかじめ、関係都道府県知事の意見をきいて、河川区域に隣接する一定の区域を河川保全区域として指定することができるとしています。河川法は、洪水、高潮等による災害の発生の防止、河川の適正な利用および流水の正常な機能の維持を目的としていますが、このような河川管理の目的を達成するため、河川工事、河川の利用の規制、河川区域内における行為の規制を行なうのみでは不十分で、河川区域外の一定区域についても必要な規制を行ない、河川管理上支障ある行為を制限する必要があります。特に河川および河川管理施設は、河用の流水によって生じる災害の発生の防上のために重要な機能を果たしているところから、その保全に支障を及ぼすおそれのある行為は、河川区域外で行なわれるものであっても規制する必要があり、その前提として、公用負担制限を課す河川保全区域の指定制度が設けられたのです。

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河川保全区域内において、土地の掘さく、盛土またはその他土地の形状を変更する行為。工作物の新築または改築をしようとするものは、国土交通省令で定めるところにより河川管理者の許可をうけなければなりません。ただし、政令で定める行為についてはこのかぎりではありません。この許可は、単に一般的不作為下命を特定の場合に解除して適法に許可にかかる行為をすることを得さしめるものであって、権利を設定するものではなく、覊束裁量行為です。それは保全区域の指定による行為制限は、公共の福祉のための財産権の行使の制限であり、目的達成のため必要最小限度の範囲にかぎられるべきであるからです。この規定に違反して河川保全区域において制限該当行為をしたものには罰則の適用があります。
河川保全区域の指定は、河川という公物の保全のためにそれに隣接する区域を指定し、その区域内の一定の行為につき公用負担制限を課して区域内の土地にかかる財産権の行使を制限するものです。ただ、この保全区域の指定は、私有財産尊重の見地から必要最小限度の区域にかぎってするものとし、かつ河川区域の境界から五○メートルをこえてしてはなりません。ただし、地形、地質等の状況により必要やむををえないと認められる場合においては、五○メートルをこえて指定することができます。そして、河岸又は河川管理施設を保全するためにかぎり指定ができ、他の目的のためにすることはできません。このように、公物の目的を達成するために、公物の区域の隣接地を指定し、その区域内の土地等に関する財産権に対し公物保全のために必要な一種の公用制限を課すことができるのは、民法の相隣関係に類し、これらの制限は、公物の管理という公共のためになされる一般的制限であり、その制限の結果損失を生じることがあっても、財産権の内在的制約の範囲をこえるものでなく、当然に受忍すべき性質のものとして、原則として損失補償を要しないものと解されています。このように、河川保全区域の指定による行為制限は、公物管理権にもとづく公用制限であり、一般的警察権の発動になります。
海岸法は、津波、高潮、波浪その他海水または地盤の変動による被害から海岸を防護し、国土の保全に資する目的を達成するため、都道府県知事が必要あると認めるときは、防護すべき海岸に係る一定の区域を海岸保全区域として指定することができるとしています。この指定は、この目的を達成するため必要最小限度の区域にかぎってするものとし、陸地においては満潮時の水際線から、水面においては干潮時の水際線から原則としてそれぞれ五○メートルをこえてはなりません。海岸保全区域は、海岸を国の公物と考え、防護すべき保全区域内での保全に支障ある行為を制限し海岸保全の効果をあげようとするものです。公物の区域内で、公物制限を課す区域である点で、公物に隣接した区域の制限である河川保全区域と異なります。
海岸保全区域内において、海岸保全施設以外の施設または工作物を設けて海岸保全区域を占用しようとするときは、海岸管理者の許可をうけなければなりません。この許可は、占用権を設定する設権行為であると同時に、公物警察制限の解除の性質をもち、自由裁量行為だとされています。許可をうけない占用行為には罰則の適用があります。海岸保全区域内において、土石の採取、水面もしくは他の土地上の他の施設等の新設、改築、土地の掘さく、盛土、切土その他政令で定める行為をしようとするものは、海岸管理者の許可を得なければなりません。この許可は、公物警察にもとづく一般的禁止の解除という性格を有しますが、土砂の採取の場合にはさらに、土石を取得する権利を設定する設権行為としての性格も有していると解するものと、公物管理権にもとづく許可使用であると解するものとがあります。この八条の許可は、海岸の保全という公物管理目的のための制限を解除するものであるため、公物管理権にもとづく許可使用と考えるべきです。
七条、八条とも、許可申請があった場合、その申講にかかる事項が海岸の保全に署しい支障を及ぽすおそれがあると認めるときは許可してはなりません。いずれの許可も海岸の保全上必要な条件を付することができます。海岸管理者は、一定の海岸保全上の理由で、許可の取消、条件変更、その他必要な措置を命じることができますが、その場合、通常生じるべき損失を補償しなければなりません。

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