農地の所有権移転

農地は宅地、山林等の他の土地と異なり、農業生産の手段として、農地法により必要な規制をうけます。したがって農地であるか否かは、土地取引においてきわめて重要な意味を持っています。農地法では農地とは耕作の目的に供される土地としています。耕作とは土地に労資を加え肥培管理を行なって作物を栽培することであり、果樹園、牧草栽培地、わさび田、筍栽培の竹林等も肥培管理が行なわれているかぎり農地です。またそれには、現に耕作されていなくても、耕作しようとすればいつでも耕作できるような、すなわち客観的にみて、その現況が耕作の目的に供されるものと認められる休耕地、不耕作地も含まれます。さらに、重要なことは、農地であるかどうかの判定は、その土地の現況によって行なわれるのであって、土地登記簿上の地目によって判定されるのではないことです。このことは現況主義とよばれるもので、例えば登記簿上、山林、原野であっても、その土地がどのような利用状況にあるかが、当該土地の農地性の判断の基礎となります。かかる農地を農地として取得する場合と宅地として取得する場合とでは、農地法上、許可権者、許可基準等において取扱いを異にしています。

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農地等の所有権移転または賃借権、その他使用および収益を目的とする権利の設定、移転を行なうためには、農地を農地として利用する場合であろうと、宅地として利用する場合であろうと、原則として農地法の許可を必要とします。この許可をうけないでした権利の設定または移転の法律行為はその効力を生じず、罰則の適用もあります。この許可の法律上の性格は、当事者の法律行為を補完して、その法律上の効力を完成させる補充行為の性格を有するものと解されており、したがって、許可をうけることを停止条件とする契約等の法律行為をすることを禁止しているわけではなく、また、当事者の法律行為は許可あるまでは不確定の状態におかれることになります。さらに許可のこのような法律的性格から、許可があっても、当該契約そのものを解除することはなんら支障はありません。この許可の対象となるのは、農地等についての所有権移転、または地上権、永小作権、賃借権、その他農地の使用および収益を目的とする権利を設定もしくは移転する場合のすべてが含まれます。したがってそれは私法上の契約にもとづくものばかりでなく、競売、公売、遺贈等の単独行為、公法上の契約、行政処分にもとづくものもすべて含まれます。しかし、取得時効によってこれらの権利を取得する場合は、原始取得であり、また債務不履行等の法定事由にもとづく契約の解除は、契約前の状態に戻すもので新たに権利を設定または移転させるものではないので許可の対象とはなりませんが、解除のなかでも合意による契約の解除は、新たな権利の設定または移転という性格をもつので許可の対象となります。買戻共有物の分割等も許可の対象となります。なお、農地法では許可を要しないものを、農地を農地として取得する場合は三条一項各号に、農地以外として取得する場合には五条一項各号にそれぞれ列挙しています。
許可権者は、農地を農地として取得する場合と農地以外として取得する場合とで異なります。農地として取得する場合でも、取得する者の性格、土地の所在によって許可権者が異なり、農地以外として取得する場合には取得する農地の面積によって異なります。これを整理すると次のようになります。
農地として取得する場合、個人がその住所のある市町村の区域内にある農地を取得する場合は農業委員会。ただし、その権利を取得しようとする者またはその世帯員が現に耕作の事業に供している農地の面積の合計および採草放牧地の面積の合計が、いずれも農地法三条二項五号に達しない場合は知事。
個人がその住所のある市町村の区域内にある農地を取得する場合以外の場合は知事。
農地以外として取得する場合、同一事業の目的に供するために取得する面積が2ヘクタール以下の場合は知事。
同一事業の目的に供するために取得する面積が2ヘクタールをこえる場合は農林大臣。
なお取得する農地が都市計画法七条二項に規定する市街化区域内にある場合は取扱いが異なります。
許可申請は、農地としての取得であっても農地以外としての取得であっても権利を取得しようとする者と譲渡しようとする者が連署して行なうものとされていますが、次に掲げる場合は単独申請でもよいとされます。
申請をしようとする権利の設定または移転が、競売もしくは公売または遺贈その他の単独行為による場合。
申請しようとする権利の設定または移転に関し、判決が確定し、裁判上の和解もしくは請求の認諾があり、民事調停法により調停が成立し、または家事審判法により審判が確定しもしくは調停が成立した場合。この申請は許可権者との関係でその提出先が異なります。許可権者が農業委員会の場合には直接農業委員会に、知事の場合には農業委員会を経由して知事に、農林大臣の場合には知事を経由して農林大臣に提出します。このうち農業委員会を経由して知事に提出する場合に、農業委員会が40日以内に開かれる見込みがない等一定の要件に該当する場合には、直接知事に提出することができます。
許可基準は、農地を農地として取得する場合と農地以外として取得する場合とは全く異なります。農地として取得する場合の許可基準は農地法三条二項各号に許可できない場合として列挙されています。この各号に違反してなされた許可は無効または取り消しうる処分となりますが、この各号に該当しない場合であっても農地法全体の趣旨に反するものについては不許可とすることは可能です。この許可基準は、農地法の目的に沿って、耕作者の優先取得、不耕作者の取得禁止、投機目的の取得の禁止等から定められています。以下許可できない主なものを列挙します。
小作地の場合は、当該土地の小作農が優先的に取得し、小作農以外の者は、当該小作農の同意があった場合等を除き許可できません。
農地等の権利を取得しようとする者またはその世帯員が、取得後において耕作の事業に供すべき農地の面積の合計、および取得後において耕作または養畜の事業に供すべき採草放牧地の面積の合計が、いずれも北海道では2ヘクタール、都府県では50アールに達しない場合。
権利を取得しようとする者またはその世帯員が取得後において耕作または養畜の事業に供すべき農地または採草放牧地のすべてについて、耕作または養畜の事業を行なうと認められない場合。
ここで耕作又は養畜の事業に供すべき農地又は採草放牧地とは、使用および収益を目的とする権利の有無により判断すべきであり、いわゆる請負耕作等三条の許可をうけずに貸している農地等、勝手に耕作放棄等をしている農地等はこれに該当し、かかる農地等を保有している者は、新たに農地等の取得はできない趣旨です。
権利を取得しようとする者またはその世帯員が、その取得後において行なう耕作または養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合この場合の必要な農作業とは、当該地域における農業実態からみて、通常農業経営を行なう者がみずから従事すると認められる農作業をいい、常時従事とは、農業経営によって異なりますが、年間150日以上の場合は常時従事と認められますが、150日未満の場合でも、農作業を行なう必要があるかぎり、取得しようとする者またはその世帯員が農作業に従事していれば、たとえ農作業を短期的集中的に処理しなければならない時期に雇用労力を入れてもさしつかえありません。
権利を取得しようとする者、またはその世帯員の農業経営の状況、その住所地からの距離等からみて、これらの者がその土地を効率的に利用して耕作すると認められない場合。
農業生産法人 以外の法人が取得する場合。
農地を農地として取得する場合には、都市計画法との関係はとくに生じず、たとえ市街化を促進すべき市街化区域であってもその他の地域となんら取扱いを異にすることはありません。しかし、農地を農地以外にするために取得する場合には、市街化区域内では、その土地利用の性格から、農地法施行規則六条の二に定める一定の要件を備えた届出書を農業委員会を経由してあらかじめ知事に届け出れば、農地法五条の許可は不要となります。
国土利用計画法では、地価の上昇と登記的土地取得を抑制し、適正かつ合理的な土地利用を図ることを目的として、土地取引に対して規制区域における許可制およびその他の地域における一定面積以上の場合の届出制を設けていますが、これとの関連で農地の権利取得をみると、農地を農地として取得する場合には国土利用計画法の許可または届出は要しませんが、農地以外として取得する場合には、農地法の許可のほかに国土利用計画法による許可または届出を要します。

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