請負耕作

農地の利用関係には様々な形態のものがみられます。農作業のみを委託するもの、費用の一切を土地所有者が負担し、取穫物の一切を土地所有者が取得し、報酬を耕作者に支払うもの、費用一切を耕作者が負担し、耕作者の責任において経営を主宰し、土地の使用収益の対価、小作料を土地所有者に対して支払うもの等種々の形態のものがみられます。しかも、その名称は各地において異なっています。請負耕作とよばれるものも、その一つであって地域によりその形態は異なり、共通の形態を示したものではありません。むしろ農地法の許可を得ることによってもたらされる強い耕作者保護を回避する意味で、許可を得ない賃貸借を請負耕作と称するものが多く、呼称どおり請負の内容のものは実際的にはまれです。かかる賃貸借の内容を備えたものが、請負耕作と称され、農地法の許可を得ないかは、主として土地所有者側の意向によります。それは、今日の高地価を背景として農地を資産視する風潮が強まっているなかで、農地法の許可を得ることによって、耕作者が強い法の保護の下におかれ、農地の引上げが制限されることから、賃貸借につき農地法の許可を得ること自体が資産価値の滅少につながるものと理解される傾向があるからです。一方これを耕作者の側からみれば、農地法の許可を得ていないことから賃貸借契約の効方は生じておらず、農地法の保護をうけられず、その地位はきわめて不安定です。実際に契約される請負耕作と称される賃貸借契約は、期間の更新、有益費の扱い等民法原用以下のものがかなりみられます。

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農地法三条は地上権、永小作権、その他の使用及収益を目的とする権利の設定、移転に対し、行政庁の許可が必要であるとし、その許可をうけないでした行為は、その効力を生じないとしています。実熊的にみておよそ農地等の使用収益権の設定、移転であるかぎり、その形式、名称のいかんを問わず、すべて農地法の規制をうける趣旨ですが、農地の様々の利用形態との関係で入る場合に重要なことは、委託者側が耕作の事業を行なっているか否かの判断基準です。委託者側が耕作の事業を行なっていると認められるかぎりは、農地法上は特に問題は生じませんが、耕作の事業を行なう者が委託者から受託者に移る場合に農地法上の問題が生じます。委託者が耕作の事業を行なっていると認められるためには少なくとも次の三つの要件を備えることが必要です。
経営を実質的に主宰していること。このためには、農業経営の基本にかかわる事項について、みずからの意思にもとづいて決定することが必要です。
経営上の危険負担を負うこと。
収穫物の所有権、処分権を有すること。
このうちのいずれかが受託者側に移れば、もはや委託者が耕作の事業を行なっているとはいえず、委託者と受託者との間になんらかの使用収益権が設定されたとみるべきで、当然に農地法三条の許可の対象となります。請負耕作の実態も、この観点からみれば、そのほとんどは三つの要件のいずれかを欠くもので、そこには使用収益権が設定されているとみるべきものが多くなっています。
民法では、不動産の賃借人は第三者対抗力等において弱い立場におかれているが、農地法では、農業経営の特殊性から次の三つの民法の特則を設けて賃借人に強い保護を与えています。
賃貸倍の対抗力。民法では、債権契約である賃貸借の対抗力は、不動産の場合は登記をすれば雨後の物権取得者に対しても対抗できますが、その登記も賃貸人が同意するか、特約があるかの場合でなければできず、賃貸人の意思にかかわっており、賃借人はきわめて弱い地位におかれています。しかし農地、採草放牧地の場合は、耕作者の地位の安定が不可欠の条件であり、農業政策上の観点から、農地法によって、登記がなくても、引渡を行なうことによって第三者対抗力があるとしています。
賃貸借の更新および解約等の制限。民法では、賃貸借の終了に関して、期間の定めのあるものは、期間の満了によって終了する。期間の定めのないものは、当事者が何時でも解約の申入れをすることができ、その後一定の期間の経過によって終了するとしているほか、民法六一九条に黙示の更新の規定をおいていますが、これは更新したものと推定されるにとどまり、賃貸人が後にいたって更新の意思のなかったことを証明すると更新の効果が生じないことになります。しかし、農地法ではこの原用が修正されます。第一は、賃貸借の解除、解約の申入れ、合意解約をしまたは更新しない旨の通知をしようとするときには知事の許可を要し、許可をうけないでした行為は効力を生じません。このうち期間の定めのある賃貸借につき更新をしない旨の通知をする場合は、原用として期間満了の一年前から六か月前までに相手方に対して通知をしないときは、従前と同一案件でさらに賃貸借をしたものとみなされます。さらに、賃貸借の終了に関しては、解除条件または不確定期限はつけないものとみなされ民法六一七条(解約の申込み)、六一八条(解約権の留保)の規定と異なる小作条件のうち賃借人に不利なものは定めないものとみなされます。また二○条の許可は、同条二項で許可基準が示され、賃借人に信義違反行為があった場合等五つの要件にあたる場合でなければしてはなりませんが、昭和四五年の農地法改正によって、一○年以上の定期賃賃借、水田裏作を目的とする賃貸借、合意解約のうち当該農地を引き渡すこととなる期限前六か月以内になされた合意で、その旨が書面で明らかなもの等について許可を要しないものとされました。
農地法では小作料に関しては、定額金納、経済事情の変動に伴う小作料の増額または減額請求権、不可抗力による減収の場合の滅額請求権、小作料の標準額と減額勧告が設けられています。

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