入会林野近代化法

入会林野近代化法とは、入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律の通称であって、この法律は、入会林野を農林業用に高度利用するため、入会権者の総意により、入会権を消滅させ、かわって所有権または地上権その他近代的な権利におきかえることを目的とするものです。近代的な権利におきかえるとは、具体的に、共有の性質を有する入会権にあっては、入会権を消滅させて各入会権利者の個人所有地に分割するか、あるいは、各権利者の共有地にすることであり、共有の性質を有しない入会権にあっては、地盤所有権者の同意を得て入会権を消滅させるとともに各権利者が契約により地上権その他の所有収益権を設定するか、あるいは地盤所有権を入会権者が取得して共有の性質を有する入会権の場合のごとく各権利者の個人有地に分割するか、それとも共有地にすることをいいます。この法律は、林業基本法の付属法ないし関連法というべきもので林野の林業ならびに農業的開発を目的としたものですが、国会への提案理由は、入会林野においては旧来の権利関係すなわち入会権に妨げられて高度利用ができない状熊にあるので、その土地の農林業上高度利用するために入会権を近代的な権利におきかえる必要があるということでした。

スポンサーリンク

全体的に入会林野の開発がおくれ高度利用されていないのは事実でしたが、それは決して入会権が存在するからではありません。現に育林地や改良牧野など高度に利用されている入会林野は数多くありますが、これらの入会林野は入会権者たる農民が資金や労力を投下したものです。入会権者たる農民に資金や労力があれば問題はありませんが、それがないために育林や牧野改良あるいは開墾等の高度利用ができなかったのであり、入会林野の開発がおくれた最大の原因は入会権者に資力のないことでした。しかもそれは入会権者の責任ではなく、入会権者に資力を与えなかった農林行政の貧困さと、資本資金の出し借しみによるのでした。したがって入会林野の高度利用がおくれているのは資金や労力の投下が少ないからであって、決して入会権が存在するかではありません。
しかし、入会林野であること、林野の権利が入会権であることによって利用上問題がないわけではありません。その第一は、入会権と登記との問題です。入会権は登記することができないため、もっとも、地盤所有権の登記は可能ですが入会集団の名で登記することができず、登記上の権利者が実際の権利者と異なることが多いために、入会権の在否や地盤所有権の帰属あるいは入会権者の資格の有無等をめぐって紛争を生じやすく、また実際の権利者が正確に所有権者として登記されないので、地上権や抵当権の登記ができません。そのため、第三者との契約による分収造林や育林や開墾等のための融資をうけるとができにくく、高度利用上の障害となっていました。第二は、入会林野であること自体による問題です。つまり各権利者が林野を経済上効率的に利用しようと思っても団体的な統制のために自由な利用ができず、また入会権はその地域外に転出すると権利を失うのが原則であるために、人口流出のはげしい現在、転出して権利を失うものなら何もしないぽうがよい、という理由で、有林等が行なわれず、結局高度利用されないことになります。この第一の問題は登記技術上の問題であるため、入会権に登記の道をひらくことを考えればよく、必ずしも入会権の消減を考える必要はないのですが、第二は入会権の存在自体が問題なのです。この法律は入会権の存在を問題とし、第一の問題を含めて入会権を消滅させ、他の権利におきかえる方向で問題の解決を図ったのです。
この法律により入会林野の権利関係を近代化することを、入会林野整備事業といいます。この事業は、入会権者全員の合意にもとづいて行なわれるもので、どの林野を整備するか、整備後どのように利用するか、 そのため整備後の権利関係をどうするか、それに必要な経費の負担をどうするかについて合意が必要です。この整備は各入会集団毎に行なわれますが、一つの集団が必ずしも入会林野の全部を整備する必要はなく、必要な林野だけをすればよい。整備後の利用計画は農業利用ならびに林業利用にかぎられます。具体的には共同造林、個人の育林、牧野経営、開墾による農業利用等ですが、この利用計画つまり経営の方法が決まればその後の権利関係もおのずから定まってきます。個人造林や農業利用なら分割して個人有地に、共同造林や牧野経営ならば共有となります。 以上の点について合意が成立し入会林野整備事業に着手することになりますが、これには入会林野整備計画書を作成し、それを都道府県知事に提出しなければなりません。なお、このほか共有の性質を有しない入会地においては地盤所有権者の同意が必要です。この場合、地盤所有権を取得して個人有地または共有地とするか、地盤所有権をそのままにして新たに用益権を設定するかのいずれかであるため、地盤所有権者の同意は整備計画をたてるに際しあらかじめ得ておくことが多く、また対象となる土地が農地法上の農地または採草放牧地、あるいは保安林や自然公園法上の特別地城など、その権利の変動や利用につき制限がある場合には、農業委員会またはその他関係行政機関の意見書を添付しなければなりません。そのほか入会林野の所在する市町村の長の同意書の添付が必要とされます。この計画書の提出をうけた都道府県知事はその内容を審査して適否の決定をし、適当と認めた場合には一定期間公示し、異議申立てなくこの期間を満了したときは、知事はこの計画を認可し、遅滞なくこれを公告しなければなりません。この公告の日かぎり入会林野にかかる入会権その他の権利が消滅し、その翌日計画書に定めた所有権その他の新しい権利が発生します。それとともに、知事は計画書に定められた権利の変動に関する登記を嘱託しなければなりません。登記に関する費用は一切無償であり、またこの事業により入会権者が地盤所有権を取得するなどの経済的利益を得ることがあってもその利益について課税されません。この入会林野整備事業は、入会権を消滅させて私的所有権におきかえることであり、そのことは入会林野を商品化し、土地の流動化を促進することを目的とするものです。したがって、この法律による入会林野の近代化は一面において林野の土地を入会権者から資本への集中を促進することを意味するものであるため、この法律の運用には十分の配慮が必要です。ただ農業基本法や林業基本法では農林業経営の協業化をすすめる方策をとっており、また整備の結果民法上の共有地となると持分の自由な移転あるいは分割請求が可能となり共同経営がおびやかされるので、整備後共同経営をする場合には、入会権者が取得すべき土地または共有持分を出資して農業生産法人または生産森林組合を設立するとき、都道府県知事はその法人または組合の名で登記を嘱託することができます。

田舎暮らし

農地の所有権移転/ 農地転用の許可/ 既墾地と未墾地/ 請負耕作/ 農協の農地取得と農地法/ 農振法における土地規制/ 農地相続/ 農地分与/ 町村有の原野の借り受け/ 入会林野近代化法/ 入会林野近代化法/ 山林の立木所有権と土地所有権/ 土地改良事業/ 土地改良事業の事業主体/ 農村計画/ 農村計画の内容/ 農村計画条件の整理/ 農村計画上の問題点/ 農村計画と公共施設/