土地改良事業の事業主体

土地改良事業の実施状況は、ほとんどが工事を伴う事業であり、その実施主体は、土地改良区、同連合、国、都道府県農業協同組合、同連合会、農地保有合理化法人、数人共同施行および市町村です。土地改良事業はそのいずれについても一定の手続きを経れば原則として前記事業主体によって実施されますが、国または都道府県が行なう事業にあっては、事業の種類および受益面積の規模について一定の制約をうけています。

スポンサーリンク

土地改良事業は、一般に土地の環境条件を整備し、あるいはその利用状況をかえて農業上の利用度を増進するものです。したがって、土地改良法は原則として、事業の受益地について利害関係を有する者の意思にもとづき、かつ、その者が費用を負担することによって土地改良事業を施行するものとしています。しかし、一定の土地について利害関係を有する者は、所有権者をはじめ、地上権者、抵当権者、地役権者、賃借権者等多数にわたる場合があり、また、その利害の度合いも一様ではありません。そこで土地改良法は、交換分合を除くすべての土地改良事業を通じて各事業毎にこれらの利害関係者のなかから一定の資格者を特定し、この資格者が土地改良事業に参加することとしています。この事業参加資格者は、原則として農用地については使用収益権者、非農用地については所有者です。土地改良法の前身である戦前の旧耕地整理法においては、地主がこの事業参加資格者と規定されていましたが、農地改革の成果を維持するとともに、土地と水とは農業経営上基本的な生産手段であるため土地改良事業は農業経営の担い手である耕作者が担当するのが最も妥当であること、さらには、近代的権利関係は所有権から利用権中心に移行してきていること、また、水利施設についても耕作者の組織する団体が管理するのが適切であること等の理由からすでに農業用に供されている土地については、使用収益権者を優先させているものです。ただ、非農用地については、当該土地を土地改良事業の受益地に含めるのは主として当該土地を農用地にかえる場合であり、所有者の利害が最も深いものと考えられることから従来通り所有者を事業参加資格者としています。しかしながら、この事業参加資格者を前記原則のとおり画一的に定めることは、士地の事情によっては、逆に不合理なこともありうるので、一定の手続を経てこれ以外の者が資格者となることを認めているほか、事業参加資格者としてその意思を反映させることが適当でないと考えられる一定の土地については資格者の特例措置を講じています。
土地改良区が土地改良事業を行なおうとする場合の態様には、新たに土地改良区を設立して行なう場合のほか、既設の土地改良区が新たな別の土地改良事業を行なう場合とがありえますが、法は前者について詳細に規定し、後者については前者の規定を可能なかぎり準用し、しかも事業計画の重要な変更の場合と同列に取り扱っています。新たに土地改良区を設立して土地改良事業を行なおうとする場合の事業開始手続は土地改良区の設立手続と一休的に規定されており、その概要は次のとおりです。
三条資格者、一五人以上の者は、土地改良区の地区となるべき一定の地域を定め、計画概要と定款作成の基本となるべき事項等を作成し、これを関係市町村事務所に五日間公告し、三条資格者の三分の二以上の同意を得たときは、都道府県の技術吏員の援助をうけて事業計画および定款等を作成のうえ、都道府県知事に土地改良区の設立認可を申請する認可申請があったときは、都道府県知事は、専門技術者の報告にもとづき事業計画および定款について審査を行ない、その適否を決定し、その旨を当該申請人に通知します。都道府県知事は、申請を適当とする旨の決定をしたときは、遅滞なくその旨を県公報に公告するとともに二○日以上の相当の期間を定めてその決定に係る土地改良事業計画書および定款の写しを通常、関係市町村事務所において縦覧に供します。利害関係人は、公告された決定に対して異議があるときは、縦覧期間満了後一五日以内に知事にこれを申出ることができ知事はこの異議の申出をうけたときは、専門技術者の意見をきいて縦覧期間満了後六○日以内にこれを決定します。異議の申出がなかったときまたは異議のすべてについて決定があり、その結果が事業計画または定款に矛盾するものでないときは、知事は認可番号を付して認可します。土地改良区は、この認可によって成立し事業計画にもとづいて事業を実施することとなります。なお、土地改良区は、民法法人、商事会社の場合と異なり県公報に設立認可の公告をすることによって第三者対抗要件を備えることとなります。
土地改良区が既定の土地改良事業計画にもとづいて土地改良事業を施行したところ様々な事由によってその計画を変更し、またはその土地改良事業を廃止しなければならない場合があります。あるいはまた、現に施行中の土地改良事業のほかに新たに別の土地改良事業を行なう必要のある場合もあります。このため、これらの変更等について一定の手続きを定めていますが、特に重要な変更を伴う場合、事業を廃止する場合、または新たな土地改良事業を施行する場合にあっては、事業開始手続の場合と同様に原則として土地改良法の基本原理である三条資格者の三分の二以上の同意を要することとされています。
土地改良区以外の事業主体が行なう事業開始手続および変更、廃止に伴う手続については、国、県営事業の場合にあっては、土地改良事業計画書は事業主体である国または都道府県が作成すること、認可は不要であること、申請事業の場合にあっては一定の申請要件が課せられていること、事業の廃止に関する規定がないこと、国営事業については費用の負担、徴収に関する規定が画一的に規定されていること、農協営事業、数人共同施行等の場合にあっては事業施行地域内の土地についての使用収益権者全員の同意が必要であること、市町村営事業の場合にあっては、あらかじめ市町村議会の議決を得ること、関係土地改良区の同意を得ること等の主たる相違点を除いて、土地改良区の行なう土地改良事業に関する手続とほぼ同様になります。

田舎暮らし

農地の所有権移転/ 農地転用の許可/ 既墾地と未墾地/ 請負耕作/ 農協の農地取得と農地法/ 農振法における土地規制/ 農地相続/ 農地分与/ 町村有の原野の借り受け/ 入会林野近代化法/ 入会林野近代化法/ 山林の立木所有権と土地所有権/ 土地改良事業/ 土地改良事業の事業主体/ 農村計画/ 農村計画の内容/ 農村計画条件の整理/ 農村計画上の問題点/ 農村計画と公共施設/