農地の売買

農地の売買や貸借等に関しては、民法のほかに農地法の規制があります。現行の農地法では、農地はその耕作者みずからが所有することが最も適当であるという、いわゆる自作農主義の原則分基礎として、農地の売買についても相当に厳格な統制を加えています。つまり、一般に農地または採草放牧地の所有権と収得できる者は、 耕作又は養蚕の事業を行う個人もしくは、その世帯員または農業生産法人に限られています。しかも、これらの者でも、無制限に農地または採草放牧地を取得できるわけではなく、個々のケースごとに都道府県知事の許可を受けなければなりません。なお、例外的に知事の許可を受けないでもよい場合がごく若干あります。例えば、農地の売買が、民事調停法による農事調停によって行なわれる場合は、知事の許可はいりません。しかし、家事審判法による家事調停の場合には知事の許可が必要です。

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許可申請がなされると知事は、買主や売買される農地の具体的な状況をみて、許可するかどうかを決定するわけですが、農地法には、許可を与えてはいけない8つの場合につき詳細な規定があります。その主なものを説明します。
現に小作に出されている農地は、その小作人またはその世帯員が買主となる場合でないと許可されません。小作人が買受を希望しない場合でも、他人がその小作地を買い取ることは許されませんもっとも、買主以外の者が適法な小作人であるかどうかは、知事の許可の時を基準として決めるのですから、小作人以外の者を買主とする売買契約も、当然に全く無効だとは言えません。
買主もその世帯員も、その農地について耕作の事業を行なわないと認められるときは、許可されません。
その農地を取得する結果、買主の農地保有面積が一定面積を超えることとなり、しかも、買主世帯の自家労働力を主としたのでは効率的な農地利用ができない、と認められた場合は、許可されません。ただ、この判断も許可の時を基準にしてなされるわけですから、この最高面積を超える結果になる売買契約も、当然に全く無効なものだとはいえません。
買主の現に保有する面積が都府県では原則として30アール、北海道では原則として2ヘクタールに達しない場合は、許可されないのが原則です。ただし例外として、その農地を取得すればこの最低面積を超えることとなり、かつ買主が農業に精進する見込があるときとか、草花等の栽培でその経営が集約的に行なわれるときには、許可されます。
許可をする者は都道府県知事ですけれども、許可申請書は、市町村または特別区の農業委員会を経由して知事に提出しなければなりません。申請書には、売買契約の当事者ならびに売買される農地の事実上および法律上の事項について、買主世帯の農業経営状況、目的農地の利用状況、契約の内容等、かなりこまかな記載が必要とされています。また、申請書には売主、買主双方が連署しなければなりません。もっとも、売買が競売、公売であるときとか、確定判決または調停調書によって成立している場合には、単独申請ができます。
知事の許可は、売買契約により農地の所有権が売主から買主に移転するという効力が発生するための要件です。このことを、知事の許可は農地の所有権を移転する行為につけられた法定条件である、と表現する場合もあります。要するに大事なことは、農地の所有権が売主から買主に有効に移転するためには、私法上有効な売買契約ないし所有権を移転する行為が行なわれることと、農地法上有効な知事の許可があることとの両方がなければならないことです。ですから、許可があっても、私法上有効な売買がなかったり、登記がなく第三者に主張できなかったり、取り消されたりした場合には、結局所有権は買主に移らないことになりますし、また、知事は許可にあたって、売買の私法上の効力については判断せず、買主が農地を取得することに農地法上の適格性があるかどうかの点だけについて判断するわけです。なお、売買が、買戻権や再売買予約完結権によってなされる場合にも、知事の許可が必要です。
農地を所有者みずから耕作しないで他人に貸すときには厳格な統制があるほか、転用のための売却はもちろん、自己使用のための転用についても、知事の許可が必要です。

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