農地の売買と登記

農地の売買契約をして、知事の許可を得て引渡も受け、すでに耕作をしています。この場合でも登記をしておかなければ、第三者には所有権の取得を主張できないものでしょうか。
他人の農地を適法に耕作できる権利は、実際にはほとんどすべての場合が賃借権です。賃借権を第三者に対して対抗するためには、賃借権の登記をする必要はなく、農地の引渡を受けていることだけでよいのです。農地の所有権取得を第三者に対抗するためには、登記を受けることが必要です。
Aが所有する或る農地が、けじめXに売却され、後にYに売却された場合(二重譲渡)、どちらの売気にもまだ知事の許可のない間は、XもYも所有権を取得していません。もし、まずAX間の売気に知事の許可があったとすると、Xが所有権を取得します。こうなると、もはや、AY間の売買については知事の許可は受けられないのでしょうか。実は、AY間の売買についても許可を受けられるのです。それは、農地法三条または五条にもとづく知事の許可は、取得者が農地法上の適格性を有するか否かの点のみを判断して決定すべきであり、それ以上に、その所有権の移転等の私法上の効力やそれによる犯罪の成否等の点についてまで判断してなすべきではないと解されているからです。そこで、AY間の売買にも許可があったとなると、XもYも所有権を取得したことになり、同じ農地について、XとYの所有権が衝突しますから、XY問で対抗の問題となり、どちらかのうち早く登記を受けた方が他方に優先することになります。早く知事の許可を受けた方が優先するわけではありません。もっとも、AがXから代金全額を受領しておきながら、Yに二重譲渡し、許可を受け、登記を移転したようなときは、Aは横領罪に問われるおそれが大ですし、AとYの状況いかんによっては、ごく例外的に、Xは登記がなくてもYに対抗できる場合も無くはないようです。
農地の売買契約がなされれば、まだ許可がない間でも、将来の所有権移転請求権を保全するため買主は仮登記ができますし、その仮登記によって、後に許可があったらなされるところの登記の順位を保全することができます。そこで二重譲渡の場合、一方の買主が先に仮登記をしておくと、他方の買主は、先に許可を受け、登記を受けても、仮登記の抹消請求はできませんし、仮登記を受けた買主は、他の買主が先に許可を受け、登記を受けていても、後から自分への売買につき許可を得たうえ、他方の買主に対して登記手続請求と土地明渡請求をすることができます。

田舎暮らし

農地の売買/ 農地の転用手続き/ 農地移転/ 農地の売買と登記/ 山林の売買/ 山林立木と庭木の売買/ 立木留保の山林売買/ 住宅地として仮登記名義の農地を購入したとき/ 小作地の返還/