立木留保の山林売買

Aから樹木に覆われた山林を買い移転登記も済ませましたが、Aの前の所有者であったBが、Aに売ったのは地盤の所有権だけで、樹木は売らずに留保しておいたものだから、近く伐採するといってきました。当方はAから当然樹木付土地所有権を買ったと考えていますので、Bの言い分は納得できませんが、この場合はどうなるのでしょうか。
この場合のようなAB間で行なわれたような立木留保の地盤だけの売買は、実際にはあまり行なわれないとは思われまいず、やろうとすれば法律 上も可能です。ただし、第三者が現われた場合には、問題を生じます。つまり、地盤所有権の登記もA名義になっていることだし当然立木所有権も取得できると考えて地盤と立木とを一括して買い受けた立場を保護して、もはやBは立木所有権の留保を対抗できないと解すべきか、それとも、立木留保の特約をしたBの立湯を保護して、Bは立木所有権の留保を対抗できると解すべきか、の問題を生じるのです。
最高裁は、この問題について、Bは第三者には立木所有権の留保を対抗できないとして、第三者の立場を保護しています。そして、その理由としては、本来立木は地盤の一部であるという前提の下に、立木所有権の留保も物権変動の一部と解すべきであるから、この場合には立木につき立本法による登記をするかまたは該留保を公示するに足る明認方法を講じない以上、第三者は全然立本についての所有権留保の事実を知るに出ないものであるから、登記または明認方法を施さない限り、立木所有権の留保をもってその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗しえないものと解するを相当とすると説いています。
しかし、この最高裁の考え方に対しては、第三者の立場よりもBの立場を保護すべしとする反対論も、有力に唱えられています。
一つは、元来立木は地盤たる土地の一部を構成するが、一旦立木を土地から分離して独立の所有権の対象としたのちは、土地の譲受人が立木所有権を当然に取得するということはありえないのであり、したがって、第三者を保護すべきかどうかの問題は、最高裁のいうように対抗要件の問題ではなく、立木については所有権を持たない者を、その者が地盤所有権の登記名義人なので立本についても所有権をもっていると信じて買い受けた場合に、その買主を保護すべきかどうかの問題、つまり、登記の公信力の問題であり、日本の登記には公信力がないから、このような買主は保護されない、とする見解です。
もう一つは、立木と土地とは本来的に、Bが所有しているときから別々の不動産であり、したがって、最高裁のいうような土地、立木分離の取引というものは存在する余地はないのであるから、は立木については全くの無権判者であり、Bに対して対抗要件の欠訣を主張しうる第三者とはいえないとする見解です。
この問題の法的処理は、きわめて困難です。最高裁のように、こういうケースにまで無雑作に明認方法の適用範囲を拡げることには、疑問を感じますが、だからといって、登記の公信力の問題あるいは普通の対抗の問題といいきることにも、また疑問を感じます。むしろ、一方において、土地登記簿に立木所有権の変動を反映させ、立木留保の記載を認めてBを保護する途をひらくとともに、他方において、その記載のない以上、善意の第三者には立木留保を対抗できないことにする、といったような考え方が可能なのではないかとは思いますが、ここでは、疑問を提示するにとどめておきます。とにかく、現在のところ、裁判上の取扱いは、先に述べた最高裁の考え方によることになりますから、Bが明認方法ないし立木登記をしていない以上、Bの主張を拒否できるわけです。

田舎暮らし

農地の売買/ 農地の転用手続き/ 農地移転/ 農地の売買と登記/ 山林の売買/ 山林立木と庭木の売買/ 立木留保の山林売買/ 住宅地として仮登記名義の農地を購入したとき/ 小作地の返還/