住宅地として仮登記名義の農地を購入したとき

農民であるAの所有する畑をBが購入し、六年後にBはそれを住宅用地としてCに、転売しました。ところが、Cが登記簿を閲覧したら、まだ所有者はAの名義のままになっており、ただB名義の仮登記がなされているだけでした。CはBに問いただしたところ「自分がAから買った時には、転買人が誰になっても転買人のために登記を移転することを、Aと約束していたのだから大丈夫だ」といい、また直ちに仮登記の名義人をBからCに移転(附記登記)することにしようというので、とりあえずその通りしました。しかしCは心配なので、Aに対して、直接自分に移転登記してくれるようかけ合いましたが、「Bに売却し代金も全額受け取ったが、あなたに売ったつもりはない」と応じようとしません。この背後には、地価上昇の利益をBだけに独り占めさせたくない、という気持があるのでしょう。こういう場合、できるだけ早く、Cが自分名義の登記を受けるにはどうしたらよいでしょうか。

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農地の売買については、買主が農地として利用する場合でも、宅地等に転用する場合でも、原則として都道府県知事の許可を受けなければ、所有権を買主に移転させる効果が発生しないことになっています。この統制は、農地が自ら耕作しない者の手に渡ったり、やたらと転用されたりすることのないようにしようというためのものです。知事への許可申請は、売主と買主とが連署した書面でするのが原則で、したがって売主も買主も当然に許可申清に協力する義務を負うわけです。そして売主から買主への移転登記の申請には、この知事の許可書を添付することになります。もっとも登記簿の地目が田畑等でない場合は、許可書がなくとも一応登記はなされます。なお、転用目的の売買が都市計画法の市街化区域内の農地についてなされる場合は、売主、買主連署して届出をすればよいことになっています。
そこで、AB間の売買について許可が未済であると、まだBに所有権が移転していないことになり、したがってCがBから買ったといっても、Bから農地の所有権を取得することはできないわけです。またAC間には売買契約はないから、CがAから直接に農地所有権を取得する根拠もないことになります。
ではCはあきらめなければならないか、というと、そうではありません。それは、CはBから路地の所有権そのものを買い取ることはできませんが、BがAに対して持っているところの、売買契約から発生した許可未済の間でも認められる買主としての地位ならば、Bから譲り受けることができるからです。買主としての地位の具体的内容としては、許可申請協力請求権、許可を条件とする移転登記請求権、代金支払債務等です。ただし、買主の地位の譲渡については、原則として売主の承諾が必要だと考えられます。
一方、登記簿の表示上からみると、AB間で売買の予約があり、予約上の権利者としてのBの権利が仮登記によって保全され、それがCに譲渡されています。この予約上の権利(予約完結権)の譲渡については、予約義務者(A)の承諾を受けなくても、仮登記名義を移転(附記登記)すれば、それでAに対抗できるとされています。
Cとしては、あるいは実質上も登記簿の表示通り予約完結権をBから譲り受けたと主張したいところかもしれませんが、おそらくAはこれを認めないでしょう。すなわち、AB間の取引は売買契約そのものであり、ただ農地法上の許可が未済であり、かつそれにもかかわらずBの権利を保全する必要があり、その方法として形式上売買予約を原因とする仮登記をしたにすぎない、というでしょう。またもし、CがBから買主としての地位を譲り受けたとしても、Aがそれを承諾しない限り、CはAに対抗できない、とAはいうでしょう。
そこで、AB間の売買において、「Bから転売された場合に転買人がだれになっても転買人のために許可申請、登記する」特約が問題となります。Aもこの特約の存在を否認できないような明確な形でこの特約が存在する場合には、Cにとっては、かなり有利となります。しかしなお、この特約にいう転売の解釈がわかれることになります。すなわち、転売が買主である地位の譲渡の意味だと解釈できるとすれば、この特約によってAは買主の地位が譲渡されることをあらかじめ承諾していたこととなって、Cにとっては好都合なわけですが、転売とは農地所有権そのものの譲渡を意味すると解釈されるとすれば、先に述べたように、Cは、農地所有権をBを経由して取得することも、Aから直接に取得することもできなくなり、したがって特約そのものが無意味となってしまいます。そして、CからAに対して訴訟をした場合に、どちらの解釈になるかを確実に予測することは困難です。
ですから、訴訟に持ち込んだ場合の勝敗のリスク、期間、費用等を考慮すれば、例えば、ABCの話合いによって、CはBから買主として地位を譲り受けたことを、Aが承諾し、許可申請、登記申請は、AC間で直接に売買契約がなされた場合と同様な方法で行なうことが考えられます。

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