小作地の返還

Aは、農地三〇アールを以前からBに小作させていますが、ここ数年Bはほかに所有する自作地を次々に売却したり転用したりして、現在ではこの小作地しか耕作していません。B一家の生活費は、転用地に建てたアパートの家賃と会社勤めの給料によってまかなわれており、小作地の農業所得はまことに微々たるものです。だからBは離作料を目当てに耕作しているにすぎないと思います。Aは、この小作地を返してもらえるでしょうか。
Cは、農地五〇アールを以前からDに小作させていますが、Cが負担している負債を弁済するために、小作地を返してもらった上で他人に売りたいといっています。こんな事情のときは小作地を返してもらえるでしょうか。
EがFに小作させている農地は、都市計画法の市街化区域の中にあり、固定資産税も高くなりますので、アパートの敷地に転用したいと考えていますが、どうしたらFから返還をうけられるでしょうか。

スポンサーリンク

小作契約を終了させるには、農地法によって原則として都道府県知事の許可をうけなければならないことになっています(無償貸借の場合は許可不要)。この許可申請書は市町村農業委員会を経由して提出するのですが、許可をうけられる場合が、小作人の信義違反(小作料不払い、無断転貸等)、その農地を転用することが相当である場合、地主の自作を相当とする場合、その他正当の事由ある場合等に限定されています。しかもこれらに該当する場合でも、特に転用相当、自作相当の場合などでは、さらに離作料の支払い等の条件をつけた許可になる場合があります。
しかし、この許可をうけないでもよい若干の例外があることに注意しなければなりません。その主な揚合は、地主、小作人の両当事者によって解約の合意が書面でなされている場合(ただし農地を地主に引き渡す期限前六ヵ月以内のものに限る)、民事調停法による農事調停の場合、一〇年以上の期間を定めた小作契約につき更新を拒絶する場合等です。
では、はじめの事例について許可の予測を考えてみますと、離作料目当てだけの耕作の場合も、直ちに小作人に「信義違反」があったといえるかどうか疑問ですし、地主の負債整理のための売却希望の場合も、それだけで正当の事由ありとはいえそうにありません。市街化区域内小作地の転用希望の場合は、具体的な転用計画がある限り転用相当といえるでしょうが、なお離作料支払いの条件付許可となる見込みが強いようです。
このように、無条件許可の予測が困難だとすると、地主、小作人両当事者の話合いで適当な額の離作料を払うことにし、合意解約の書面を作成すること(これなら許可不要)が考えられます。問題は離作料の額ですが、地域によって慣行がまことに様々ですので、小作地価格の何割がよいというような一率の基準はたてられません。だから、地域の慣行に詳しい市町村農業委員会に、和解の仲介を申し立てるのもよいと思います。もっとも、この和解で決められた、離作料の支払い、農地の引渡し等が実行されない場合に、直ちに強制執行をすることはできず、訴えを起こさなければなりません。違約の場合にただちに強制執行ができるようにするためには、民事調停法による農事調停を地方裁判所に申し立てることが必要です。

田舎暮らし

農地の売買/ 農地の転用手続き/ 農地移転/ 農地の売買と登記/ 山林の売買/ 山林立木と庭木の売買/ 立木留保の山林売買/ 住宅地として仮登記名義の農地を購入したとき/ 小作地の返還/