既存農村住宅の空間構成

既存の農村住宅は、一般に大きく分けて床上の居住用空間と、これに接して設けられた土間空間によって構成され、これを既存の農村住宅の平面構成の特色としてとらえることができます。床上の居住用空間は、いわゆる田の字型、併列型、三つ間取り型、ないしは広間型、またはこれらの変型の間取りによって居室が配列されており、これが全国的に分布しているところから、これらの間取り型が既存の農村住宅の典型として指摘されています。これらの農村住宅では、床上は居住用空間として居室が図示したように配列されていますが、土間空間は流しやかまどなどの炊事設備や風呂などが未分離の状態におかれているほか、収穫物や農機具の置き場、畜舎、農作業の場に使用されていました。一方で床上の居住用空間においても、農繁期には一時的に営農上の利用が盛んに行なわれてきました。例えば養蚕経営における蚕室転用、タバコ作経営における葉吊り、葉のし作業場への転用、あるいは、収穫物や肥料の収納につかうなどが顕著にみられました。このように、住宅内の農用利用が多いために、既存の農村住宅では、農作業に便利なようにとの配慮が空間構成や面積、設備などを規定するための大きな要因となっていました。したがって、農村住宅には、そのときどきの主体となる農業の経営や規模、あるいは農業技術の発展段階に対応した面積や設備が用意されてきたのであって、農村住宅は居住用のものであるよりも農用を目的とした農用住宅としての性格が強かった。

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戦後の農業技術の進歩は、作業機の大型化をもたらし、従来のような土間内作業を困難にし、一方では作業機の高能率性は作業時間を短縮させ、従来の土間内作業を圃場や庭先に移行することを可能にしました。これらが契機となって、土間内作業が排除されるようになり、作業空間は、屋外や別棟作業場に確立してきました。この間の空間構成の変化は明治20年では古い技術や経営の段階に対応した住宅、昭和34年では、新旧の住宅が混合しながら、その時点での農業にどう対応しているかを、戦後の住宅では、戦後の技術や経営に対応した動きがとらえられています。つまり年次が進むにしたがって、住宅内の居住用空間の面積とそれの住宅内に占める構成割合は大きくなり、相対的に農用の土間空間の面積と構成割合は小さくなっています。この土間空間の面債の著しい減少は、脱穀調製技術の進歩と作業機の大型化に対応したものです。既存住宅にみられる土間面積の減少は、土間部屋面積の増大、既存の土間を区切って玄関、居室、炊事場、風呂場などを土間部屋としてそれぞれ独立させる動きとなってあらわれています。特に戦後に建築された住宅は、居住用空間の面積、なかでも構成割合の増加が著しく、これに対し土間面債の大幅な減少には、すでに土間が作業土間から玄関土間に転換したことを示しています。この段階になると、農村住宅の農用的性格はようやく稀薄になり、居住性の向上がみられます。

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