新築の農村住宅

新築の農村住宅では、農業空間を排除し、居住用空間の確立した空間構成が一般的です。この段階になると、すでに住宅は農業からの規制をはなれて、居住性の高いものが要求されるようになり、経営形態に規定された平面型をとらえることはできません。農用空間を全面的に排除し、農用部分は別棟作業場でまかなわれるように計画配置され、農業からの直接の影響は住宅の平面構成には及びません。ただし、土や動物を相手の生産活動を営むという農家の生活は、やはり住宅のなかに農業生活に密着した空間を考える必要はないのでしょうか。これをどう考えて処理するかが一つの問題です。この場合、二つの考え方があります。一つは住宅のなかには、農業生活を持ち込む必要はないとして、農業生活はすべて住宅外で完結させるという考え方です。もう一つは、住宅のなかに、農業生活と住生活の接点部分をおき、そこを一つのクッションとして住生活に入るという考え方です。

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このいずれを採るかは、経営形態、規摸、主婦の農業参加の度合などとの関係によってきまる面が大きく、前者を採れば、農村住宅の平面計画は、都市住宅と同じ手法で考えることができます。現段階では、後者の立場を採られます。特に専業農家の場合には、農業労働時間も長く、衣服の汚れもひどい。さらに、食事、休息、用事などのために住宅への出入りが多いのですが、その都度、手足を洗い、衣服の汚れを落として家のなかに入るのは面倒になります。そこで、日中の生活を処理する中間地帯が必要とされてきます。それが従来の作業用の空間でないことはもちろんです。
玄関、記帳室兼応接室、台所の3部分を結ぶ下足の空間にそれを求めています。つまり、玄関と記帳室兼応接室を一つのまとまりとして、接客、日中の来客は農事関係が多く、下足での応対が多い。台所炊事場と食事場を同一空間におき、浴室にも通じます。タ方は浴室で手足を洗い、入浴を済ませ上足の生活に入るというように、下足から上足生活に移るクッションを設けるのです。同様の役割をもつものに作業衣更衣室があります。これをどこに設けるか、どことの連絡が必要かを検討する必要があります。
調査によっても、簡単な来客の応接には、下足の空間が要求されており、主婦も農業に従事している場合には、炊事場と食事場を下足の同一空間におくことが一般的に要求されています。この下足の要求の多いところを、住生活と農業生活の接点部分として、一つの流れにまとめることが望ましい。しかし、一方には下足の台所や炊事場と食事場の併置には、くつろげないという理由で、強い批判があり、これは台所は上足にし、炊事場と食事場を独立させた型の食事形式を採るべきであるとの意見に代表されます。台所を上足にするか、下足がよいか、炊事場と食事場を分離し、各々を独立の空間にするかは、その農家の1日の農業労働時間の長さとか、主婦が家事専従か、あるいは農業に従事するかなどということが、直接の極め手になります。すなわち、農業労働時間が長く、主婦が家事と農業を担当する場合では、下足空間がよろこばれているのが事実です。これに対して、経営主の農業労働時間が比較的短く、しかもそれが朝夕に集中し、日中の自由時間が多く、主婦も家事専従の場合には、上足台所も可能かと考えて計画されますが、実際には下足の要求が強かったという事例もあります。
住宅のなかに、住生活と農業生活の接点を求めるべきか否か、求める場合はそれを、どこに定めるか、またそこは上足がよいか下足がよいかなどは、さらに検討を要する課題として、今後の農村住宅の計画のなかで、取り上げられねばなりません。

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