土地と改良

土地が広く、地味が豊かで、天候に恵まれているならば、農業においても土地改良の問題はあまり深刻でないかもしれません。そこでは、むしろ広大な面積を征服するために、労働の生産性を向上させることのほうが重要な課題だと思われます。しかし、いかなる土地もそのままでは農業に使用できるものではありません。開墾や干拓が必要であり、場合によっては河川の流れを変えるような自然を改造することも行なわなければなりません。いかに肥沃な土地でも、連続して使用すれば、やがて地力が低下してきます。また、人口が増加してくれば、やせた土地でも耕さなくてはなりません。農地利用の仕方も焼畑農業のような原始的な方式から輸作型態へ推移し、輸作も次第に体耕面積を縮小する方向へ向かいます。さらにやがては特定作物の連作も可能になります。この農地利用の変化に伴って、土壌改良、灌漑、排水などをますます徹底させていかねばなりません。

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開墾、干拓、土壌改良、灌漑、排水、さらに区画整理などの土木工事へ投じられた固定資本を土地改良資本といいますが、この固定資本は環境を保全しながら土地を農業に有効に役立てるための一種の装置であるとみることができます。これは規模が大きくなるにつれて造成に長い時間がかかりますが、一旦でき上がると、今度はその耐久性も非常に高くなります。
農業就業者1人当たりの農地面積が狭い国ほど、土地生産性は高くなりますが、日本はそのような国の代表です。日本では土地改良投資は非常に古くから行なわれていますが、明治以後土地生産性を高めるためにこれが積極的に行なわれるようになりました。耕地面積は明治未期からあまり増加しておらず、作付面積は第二次大戦後著しく滅少していますが、土地改良資本が増加したため、単位面積当たりの資本蓄積量はふえてきています。戦前の投資は地主が中心になって行ないましたが、地主が寄生化した大正時代から行政投資の割合が増し、戦後の農地改革によって政府は土地改良資本形成の重要な推進力となっています。
耕種作物は土地から直接収穫されるものばかりではありません。果実やある種の工芸作物は永年性植物によって生産されます。この場合、永年性植物は果実や工芸作物の生産のための固定資本とみなされます。この固定資本の懐妊期間と耐用期間は長いものが多くなっています。
畜産のうち酪農と養鶏はその生産物の生産を家畜によっています。この場合、これらの動物は畜産物の生産を成立させる固定資本です。これに対して食肉生産の場合は家畜そのものがその原料あるいは仕掛品在庫とみなされますが、これらの家畜を生産するための繁殖用家畜は、やはり一種の固定資本と考えられます。これらの固定資本としての家畜は、一般の家畜と同様にその成長と生存に一定の期間を要します。
農家の家屋は経営と生活との両機能を備えていますが、全額ないし面積によってそれを区別することは非常に難しく、その他の構築物や畜舎や施設園芸のハウスなどは大部分が経営を目的とするものとみなされます。これら建物資本は、他の産業の場合と大差がありません。土地改良資本を除くと、建物資本のウエイトが大きく、他の小体資本は目立ちません。しかし、農産物需要の変化を反映して、動物資本は一様に増加し、果樹も戦後は著しく増えています。永年性作物は養蚕の不振から桑園が減少したため、戦後は激滅しています。土地およびそれをとりまく自然環境は、現在までのところ農業生産を成立させるための大前提ではありますが、それだけで農業生産が行なえるものではありません。土地と農業生産とを有効に関連づけるものとして土地改良資本があり、さらに植物資本、動物資本および建物資本があります。これらの固定資本は農業における諸作業の直接的な手段というよりは、むしろ諸作業を成立させるための生産基盤であって、そのかぎりにおいては土地と共通するものがあります。そこでこれらの資本を装置的固定資本とよんで、農業機械のような省力的固定資本と区別する必要があります。

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