経常投入材

農業生産は生物の生化学的反応を人間に有利な方向へ促進するように行なわれます。製造業の生産において原料にあたるものは、農業生産においては種子です。製造業において高熱費や添加剤にあたるものが、農業では肥料や飼料や農薬になります。しかし、前者の中心技術が物理化学的であるのに対し、後者のそれは生化学的であるため、後者における経常投入材の重要性は前者のそれとは比べものにならないほど大きくなります。

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日本農業における経常投入材は明治末期から昭和40年まで、総額で3倍からの増加になりました。それも購入部分の割合が増えるという形で展開してきています。内容的には農産物需要の変化を反映し、戦前は肥料が圧倒的で、戦後は濃厚飼料が主役になりつつあります。農薬の増加もかなりの伸びを示しています。肥料は第1次大戦まで有機質肥料を主にしましたが、その後無機質肥料に変わりました。戦前は硫安にかたよっていましたが、戦後は燐酸、カリ肥料や配合、化成肥料へ重点が移りました。農薬は病虫害の防除ばかりでなく、除草にも使用されています。また飼料も自給飼料から購入飼料ヘウェィトが移ってゆくとともに,購入飼料も単体飼料から配合飼料へ重点を移動させています。
このような経常投入材の変化は農産物の増産、生長期間の短縮、省力化などに役立っていますが、これらのことを可能にするためには、ただ経常投入材を多投するだけでは駄目で、これを受け入れて十分に効果を発揮するだけの品種が前提されていなくてはなりません。したがって、農業生産においては農産物の品種改良がきわめて重要な意味をもってくるわけです。それとともに、農業における技術進歩はすべての生産要素が相互補完的に開発されるものであることに注意しなくてはなりません。例えば水稲の高収量品種は肥料の多投を要求しますが、肥料を多投すれば、水稲は病虫害を受けやすくなるため、農薬の散布を一層促進します。それとともに、肥料の多投は水の有効利用を必要とするため、灌漑、排水はそれだけ充実されなければなりません。さらに肥料の多投は深耕によってその効果をあげますが、人力による耕耘には限界があるため、役畜や機械の使用が望まれます。しかも、これら人力以外の耕耘作業が効率的に展開されるには、水田の区画整理が必要になり、土地改良はこの面からも要請されてきます。
品種改良を推進力とした現代の農法はこのようにただ経常投入材の大量投下を要求するばかりでなく、それらと結合される固定資本の形成を必要としています。しかし、こうした農法を可能ならしめている主要な背景には工業技術の進歩があります。その意味で現代の農法を農業の工業化方式というが、その工業技術の進歩には化石燃料、特に石油の大量消費が前提になっています。石油が資源的に枯渇の可能性を示し、石油製品が各種の汚染源になりつつある現在、現代農法も深刻な反省期を迎えつつあります。

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