個人消費支出

食糧消費は私達の生活を支えてくれますが、生活のすべてがこれによって賄われるわけではありません。私達は食糧以外に多くのものを必要とし、そのために支出がなされます。その個人消費支出のなかにあって、食糧費はどのような地位にあるのでしょうか。戦前の食糧費は栄養換算の場合と同じく、大正13年から昭和3年の時期にピークを迎えています。しかし、他の費目はいずれも食糧費以上の伸びをみせています。大正13年から昭和3年から昭和4から8年にかけて、すべての伸び率は停滞ないし減少しますが、これは大不況の影響と考えられますが、戦後はすべて一方的な上昇がみられます。その率は雑費において最も著しいようです。ついで住居費の伸びが大きく、光熱費、被服費の順です。以上の考察からすると、結局、1人当たり資糧費は食生活の近代化により増加していますが、他費目も増加しており、その増加率は食糧費のそれを上回っているため、個人消費支出に占める食糧費の割合は、むしろ低下します。

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食糧費の個人消費支出に占める割合は、日本においても、先進国においても、低下の傾向を示しています。そのうえ、先進国のなかでも、1人当たり国民所得の高い国ほど、概してその割合を低くしているようでした。そこで食糧費の割合だけを、世界の多くの国について採用し、それらを1人当たり国民所得と対応させると、各国の1人当たり国民所得と食糧費の割合とが逆相関にあることが認められます。ここで使用された食糧費の個人消費支出に占める割合は、しばしばエンゲル係数とよばれています。しかし、エンゲル係数は元来、家計調査資料についていわれているものです。
E・エンゲルはヨーロッパ諸国のいくつかの家計調査を検討し、家計費総額に占める食糧費の割合が、所得の高い世帯ほど低下している事実を確かめました。食糧に対する欲望は胃袋の大きさによって制限されるため、所得が増加しても、食糧に対する支出はそれほど増加することはありません。増加した所得は家計においては食糧以外の費目へより多く支出されることになります。結果として、家計費に占める食糧費の割合は、所得の高い世帯ほど低い比率を示すことになるはずです。これがエンゲルの法用で家計費に占める食糧費の割合をエンゲル係数とよぶことは周知のとおりです。総理府の家計調査において家計費に占める食糧費、つまりエンゲル係数は平均で31,9%ですが、収入階級別には、46.0%から28.6%ヘかけて、収入が上昇するにつれて低下しています。農林省の農家生計費調査は分類が家計調査と少し違っていますが、できるだけ非農家の分類に合わせてみると、エンゲル係数は平均22.1%と非農家の場合より低く、これは農家が食糧のかなりの部分を自給することができ、その部分は低価格で評価されるので、全体として農家の食糧費が非農家のそれより安くあがるからです。
クロスセクションデータの利用にはひとつの前提が存在します。それはそのデータに含まれているすべての家計ができるだけ同質でなければならないということです。そうでなければ、エンゲルの法則もたいして意味をなさないことになります。所得が高まるにつれ、家計費に占める食料費の割合が低下するという事実の発見は、現在低所得の家計がいつの日か高所得になった場合、他の事情が一定なら、現在高所得の家計と同じような食糧支出をなし、エンゲル係数を低下させるであろうという想定を裏づけるものでなくては、法則としての一般性をもつことはできません。

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