食生活と家族

現代の消費生活は多くの場合、家族を単位として行なわれており、食生活はとくにそうなっています。したがって食糧消費も消費者の経済水準によって格差を示すばかりではありません。家族はその構成員の差とその組合せによって特徴を示すわけですが、構成員の個性は1人として同じものはないため、その組合せも無限にあることになります。しかし、そこには共通点が見出せないわけではありません。消費者は純粋の個性を別にすれば、いくつかの指標で分類できます。第1に肉体的条件があげられますが、これには身長、体重や年齢、性別、人種別があります。もちろん、身長、体重が大きいほど栄養所要量は概して高くなり、男性は女性より、また思春期の人や妊娠している人は他の年齢の人より、それぞれ栄養所要量は大きくなります。しかし、女性の野菜、果実の消費が一般に男性より高いとか、日本の老人が若者より多くの場合米食率が高く、魚介類を好むとかいうことは、生理的必然性だけにその原因を帰することには問題が残ります。男性の食生活に外食が多いというようなことは、明らかに男性の社会的条件からきていることです。したがって、肉体的条件から発生する食糧消費の格差のなかには、肉体的条件がいったん社会条件へ反映して、そこから食糧消費を規定してくる部分のあることを注意すべぎです。

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家族によって構成員一人一人が違っているばかりでなく、世帯人数も家族によって違っている場合が多く、経済学では家族規模の経済といって、世帯人数が多ければ多いほど同じ消費内容に対する1人当たりの支出は少なくてすむという法則があります。住居などは、ある一定の人数まで何人で住んでも家賃は同じだから、できるだけ多くの人が同じ住居に住んだほうが得になります。このように家族規模の経済は耐久消費材では明確に認められますが、食糧の場合はどうなるでしょうか。いわゆる残飯や調理労働について、家族規模の経済が働く場合があると推定されます。同しメニューに対して多量に調理したほうが無駄が節約されて、1人分の残飯は小人数の場合より少なくなり、手間もはぶけます。これは必ずしも統計的に実証されているわけではありませんが、十分成り立つ椎定です。
世帯人数別に分類された資料に基づいて、家計比較を行なってみると、1人当たり所得が同じであるにもかかわらず、世帯人数の多い家計のほうが貯蓄率が高い場合が多く、これは家計費の節約によってもたらされたものですが、節約のひとつの原因は住居費で、世帯人数の多いほうが家族規模の経済によって1人当たり支出が少なくてすむからです。いまひとつの節約の原因は食糧費で、世帯人数の多いほうが安上がりになっています。これは残飯の節約もさることながら、食糧費の内容構成が世帯人数によって違っているからです。こういう場合は世帯人数の多いほうが米食率が高く、副食費、嗜好食品費が低くなっています。同じ栄養所要量をとるのに、穀類を中心にメニューを組んだほうが低費用であがるということはすでに述べましたが、その原理がここに働いているのです。世帯人数が多く、特に子どもの多い場合、将来に備えて貯蓄の必要がありますが、家計費節約のひとつの手段として、メニューの操作によって栄養水準を落とさずに食糧費を下げる努力がなされているのです。
家族は構成員の職業によっても特徴づけられます。職業によって労働時間や労働強度が違っているため、栄養所要量も異なり、ここから食糧消費に職業格差が発生することがあります。農家や労務者の家族の食事が、職員の家族に比べてデンプン質比率の高い場合などはそれになります。また、家族の収入の安定性が職業によって違っていますが、収入の安定性が低ければ、たとえ高い収入を現在得ていても、最悪の場合に備えて貯蓄するため消費へまわる分は少なくなります。商人や職人が、一見職員と同じ所得であるのに、油費水準が低く、食糧消費でもデンプン質比率が高いことがありますが、これには以上のような背景を考えておく必要があります。

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