所得格差の是正

経済発展が成熟期に入った先進国が当面する農業問題は、他の産業部門との間に所得格差をもたらしますが、この所得格差を解消するためには、価格低下を防げばよいわけであるため、需給両曲線のシフトをそのように調整すればよさそうに思われますが、両曲線のシフト要因は経済全体ないしは社会全体の相互関係のなかから生まれてくる歴史的結果であるため、これを人為的に操作することはきわめて困難です。経済発展の初期に発生する食糧問題はちょうど農業問題とは逆で、需要曲線のシフトが供給曲線のシフトより強い場合に相当します。この場合には技術開発を中心にして長期的に供給曲線のシフトの加速化をはからなければなりません。同じ間題は、先進国における食品流通業や食品工業の近代化についてもいえます。先進国は農業問題を抱えているのにもかかわらず、食糧価格の上昇に悩まされています。その原因のひとつは農業政策に由来しているのですが、もうひとつの原因は流通、加工部門の低生産性にあります。ここでは流通、加工部門の供給曲線のシフトが需要曲線のそれに追いつかないからです。この場合も、供給曲線をシフトさせる諸要因に刺激を与える必要があります。しかし、農業問題の場合は状況が逆であるため、例えば技術進歩を抑制すれば確かに問題は解決しますが、社会の価値判断がそれを許しません。また需要が促進されても問題解決になりますが、エンゲル法則をくつがえすことは決して容易なことではありません。

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農業問題の解決は基本的には農産物の需給関係を直接操作するよりは、農業資源の配置転換を通してなされるべきです。農業問題のもっとも重要な点は所得格差にあるわけであるため、この解決をはからなくてはなりません。通常ある産業から得られる所得が他の産業のそれに比べて低い場合は、徒事者は有利な産業へ移動していくものです。そうすれば、その産業は従事者が減少するために、需要が停滞していても、徒事者当たりの生産性を高めることができるため、従事者当たりの所得は上昇して他産業の所得と均衝するにいたのです。事情は農業といえども同じことですが、問題は農業徒事者が他産業へ流出していく速度がきわめてゆるやかであるということです。そこで、所得格差を是正する短期的な対策としては、農業従事者の所得が維持されるような水準に農産物価格を支持するということになります。この典型的な政策は日本の場合、米価支持政策ということになります。
食糧管理制度による生産者米価の決定方式は、昭和9年から11年を基準に農家の生産、生活資材の価格上昇率を算出し、それを昭和9年から11年の平均米価に掛けてパリティ米価を求める方式です。昭和27年からは都市消費者の所得上昇を加味した所得パリティ方式がとられ、昭和34年には生産費所得補償方式がそれと併用されました。昭和35年産米から従来のパリティ方式を止め、生産者米価の決定には、生産費および所得補償方式を採用することになりました。米生産費は都市の賃金、地代、利子によって再評価され、それを基準に所得格差を是正する水準に生産者米価は決定されました。このため、米価の相対的地位は戦前と戦後とで著しく変化することとなりました。消費者米価については、従来消費者家計の負担しうる家計米価の範囲内で、コスト価格や一般物価その他の経済事情を参酌して決定してきています。

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