農産物価格の不安定性

米価支持政策は多くの問題をかかえていながらも、少なくなくとも、価格を安定化する効果はあったといわなければなりません。非常に多くの農産物は直接的ないし間接的に価格政策の対象となっています。そこには所得維持という意図ばかりでなく、価格安定の目的が存在しています。価格が安定化すれば、消費者の生活設計に良い影響を与えるばかりでなく、生産者も経営計画を長期的展開のもとに確立することができ、ひいては農業を経済合理的な軌道にのせることができます。それだけ農産物の価格は自由に放任されていれば激しく変動するものなのです。その原因として、まず周期変動は、季節変動と景気変動のふたつに分けることができますが、このうち季節変動は農業において特に顕著に認められます。そこから発生する価格変動は必ずしも深刻な問題を提起しません。季節変動の場合、生産消費の変動にはかなり正確な規則性があり、変動が十分に予見されるために、加工、流通、消費の各段階で在庫操作や代替関係を施して変動に対する順応ができ上がっているからです。そして近年ではこの季節性そのものを供給段階で緩和する技術が開発されてきたために、保存の困難な生鮮食品にも安定化の傾向が認められます。

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景気変動は周期性をもっているにしても、周期が季節変動より長いため、不確定要素が多くなるので、対策はまだ十分に講じられていないというべきです。ここで景気変動という場合は、経済一般のものばかりでなく、農業の内在的原因から発生するものも含まれます。経済一般の景気変動は農業の外部に主な原因をもち、その農業への影響は農業自体にとっては一種の不規則変動とみられます。これに対して、農業に内在的原因を持つ景気変動はくもの巣定埋の典型的実例として、農業自身によって解決されなければならない問題をもっています。
農業は農産物の生産に一定の期間を要するばかりでなく、装置的固定資本の形成にも長期の時間がかかります。したがって、農業生産は農産物価格に直ちに反応することはできません。生産者は生産物が供給される時点における未来の価格を予想して生産するわけであるため、生産者が反応する価格は供給時点の実際個格ではなく、期待価格です。期待価格はできるだけ広い範囲から集められた情報に基づいて形成されていなくてはなりません。その場合、もっとも強い影響を与えるものは、その生産物の価格であり、特に供給時点より1期前に実現した価格であるということができます。
農産物の需要のほうはその購入計画から実行まであまり長い時間を必要としません。農業生産に要する期間に比べたら、それは即時的であり、需要には実際価格と期待価格との乖離はほとんどなく、農産物の需要は当期の実際価格に反応すると仮定することができます。
農産物の需給は一方が実際価格に立脚し、他方が期待価格に基づいてなされるため、両価格が一致しないかぎり、需給は必然的に食い違うはずです。この食い違いの訂正は供給側が当期の現実価格によって来期の期待価格を修正するという形で進められています。この修正は供給側の試行錯誤に依存しており、その過程が数量と価格に一定の周期変動を発生させます。
周期変動はくもの巣定埋によって説明されており、需給の価格弾性値の相対的な大小によって、振動は均衡点に対して発散、定常、収斂の三種類に区別されます。一般に期待価格に過去の価格をできるだけ多くとり入れるほど、他の事情が等しければ減衰振動をする可能性が高くなります。
市場経済における値格メカニズムの役割は資源配分の役割を適正化し、経済効率を最良の状態に維持することです。しかしそのような価格は均衡価格であるため、農産物価格が均衡価格に達する保証がなければ、農業における経済効率は最良な姿で実現することはありません。以上に述べた周期変動は現実には純粋の姿で実現することはなく、他の複雑な要因によって混乱されるため、均衡価格を正確に認識することは困難です。

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