食品工業の中小企業性

食品工業は食糧の特性のために操業度や原料入手価格が概して不安定になりがちで、また商圏が狭くなり、工場が分散的になって企業規模に制約が生じています。特に日本の食品工業の生産構造上の特徴を要約すると、次のとおりになります。中小企業性が高い。労働生産性と資本装備率が低い。原材料費の比率が高い。まず従業者300人未満の事業所の出荷額シェアを昭和46年について通産省の工業統計でみると、全製造業が43.2%であるのに対して、全製造工業はこれをはるかに上回る72.2%となっていて、食品工業の中小全業シェアが高いことが知られます。食品工業を全体としてみた場合の中小企業性は以上のとおりですが、大手企業の出現と成長に関連してとくに注目されることは、主要食品企業が二次加工分野などへいわゆる垂直的結合の展開を図るとともに、他の成長食品部門へ進出し、総合食品企業化する傾向が強いことです。またこのほか、多くの主要業種で生産集中度が高まるという傾向もみられます。

スポンサーリンク

通産省の工業統計でみると、食品工業全体としては製造業平均に比べてやや労働集約的で資本装備率が低いのですが、業種別にみれば小麦粉、砂糖、植物油脂、デン粉、配合飼料の一次加工業種やグルタミン酸ソーダ、清涼飲料、マーガリンなどは労働生産性、資本装備率ともに高くなっています。食品工業は食品のコンビニエンス化に伴って加工度が高まりつつあるとはいえ、製造コストに占める原材料費の割合がなお高く、工業統計でみると、原材料比率は全製造業が53.6%であるのに対して、食品工業は65.0%となっています。
貿易の自由化等による原料面の制約の滅少、食品加工技術の進歩、製品市場の拡大などがからみあって、すでに述べたように食品工業の多くの業種において生産規模の大型化が進んでいますが、これに伴って産業構造上ふたつの問題が顕在化してきました。そのひとつは、装置型業種における設備過剰の問題であり、もうひとつは、大企業中小企業併存業種における格差拡大の問題です。精糖、製油、製粉、配合飼料などは、食品工業のなかではいわゆる装置型産業であって、その設備には多額の投資を必要としますが、製造コスト上スケールメリットが大きのですが、精糖、製油などの生産力の拡大テンポは需要の増加を上回った結果、操業度はかなり低下し、スケールメリットを十分発揮しえない状態にあり、需要に見合った設備投資の必要が指摘されています。また、これまで中小企業の分野とされていたパン、麺類、食肉加工などの業種では、大手企業の成長や新現参入企業によって中小零細企業の経営基盤に大きな影響を与えています。
食品工業はすでに述べたように原材料費の比率が高く、しかも原料に豊凶性があるので、その安定的な確保はきわめて重要な問題です。まず国内および海外の農水産業ならびに海外の食品工業から日本の食品工業にインプットされる原料のうち、海外産品がどの程度の割合かという日本の食品工業の原料の輪入依存度を産業連関表を用いて試算してみると、昭和35年38.1%であったものが40年には40.3%、さらに45年には42.9%と、製品消費量の増加と日本の農業生産の停滞とがあいまって、輸入依存度は高まっています。
貿易の自由化は、昭和30年代以降逐次進められ、残存輪入制限品目は44年の118品目から31品目と滅少し、自由化の問題は一応一段落するに至りました。このうち食品工業にとって関係の深い農体水産物関係は44年に73品目であったものが50年には22品目となっていました。
資本の自由化は昭和42年7月以隆段階的に実施され、46年8月の第四次自由化措置によっていわゆる第1ラウンドは終了しました。この結果、食品工業はすべて自由化され、流通業の分野である食品小売業も店舗数が11店以下のものについては自由化が行なわれました。しかし、この自由化措置は外資の出資比率が50%以下のものにつき自動的に認可するという、いわゆる50%自由化が原則であったために、政府はOECDの自由化規則に定める100%自由化にそうべく、48年原則100%の自由化をさらに実施しました。この結果、食品工業はすべて100%自由化とされましたが、いくつかの業種については猶予期間が設けられました。またその際、食品小売業および農林水産業は現行どおり個別審査の例外業種とされたが50年には食品小売業がすべて100%自由化されました。このような資本自由化の進展に伴い、世界的企業やアメリカの巨大食品市場が広範囲な分野に進出しました。

田舎暮らし

農業生産/ 土地と改良/ 省力的固定資本/ 経常投入材/ 農業労働/ 限り有るエネルギー資源/ 農業工業化とトウモロコシ/ 栄養水準の向上/ 食品組合せ/ 個人消費支出/ 食糧費の内訳/ 食生活と家族/ 食糧問題と農業問題/ 所得格差の是正/ 農産物価格の不安定性/ 農業安定化対策/ 農家の主体性/ 食品流通/ 小売卸売業/ 食品工業/ 食品工業の中小企業性/ 水産業の需要ギャップ/ 水産の規模別格差/ 水産資源の確保/ 農産物の輸入制限/ 食糧自給率/ 農業政策の影響/ 総合自給率/ 食糧貿易/ 世界の食糧展望/