水産業の需要ギャップ

水産業の主要業務は天然資源を獲得することであるため、そのかぎりでは鉱業に似ているというべきです。しかし、その対象が生物であるというかぎりにおいては農業にも似ているということができます。鉱業的な側面についてみると、資源の探素と獲得技術の省力化とが重要な課題となるでしょう。水産資源は主に生物であり、広範囲の移動性をもっているものが多いため、資源の深索は決して容易なことではありません。獲得技術の省力化にしても、水上ないし水中を生産の場としているので、技術開発はまずそこでの安定操業の間題を解決してかからねばなりません。天然資源の供給不安定性と、この技術的困難とは、水産業に小規模で労働集約的な経営を発生させる可能性を与えます。しかし、近年では漁業技術の発展は急速であり、労働不足もあって、この面での省力化は農業に比べると、かなり進んでいるといえます。特に日本やロシアの遠洋漁業における近代科学を駆使した漁業技術の発展がめざましく、漁獲技術に巨額の資本投下がなされています。漁船団のみならず、船上加工工場や冷凍設備の完備、そしてエレクトロニクス技術による魚群探知や大型底曳漁業の発展等があげられます。

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水産業における農業的側面は、第一に生産対象が生物で、大部分が食用ないし飼料に供せられるため、その可食性と保存性の開発が重要な課題となるということです。流通、加工との関係はきわめて密接なものがあります。第二に農業との類似点は水産業の対象が生物であるために、その養殖も可能であるということです。養殖は資源培養のひとつの方向ではありますが、餌に魚介類が使用されていること、人工ふ化が必ずしもすべての養殖で成功していないこと、養殖によって水域が汚染されることなどのため、不完全です。水産資源の再生産と環境保全を考慮した広域の養殖漁業が開発されなくてはなりません。
明治未期の水産物の生産量は、昭和31年から35年平均の約4分の1でした。それから大正未期、昭和初期にかけて、約2倍に増加しましたが、その後は著しい伸びは、戦後復興期を除いてみられません。戦前は昭和11年の433万トンがピークでしたが、終戦直後の20年は182万トンに激減しました。その後急速に回復し、昭和27年には482万トンに達し戦前の最高水準を突破しました。そして20年後の47年に1000万トンの大台に乗せましたが増加率としては、さして高い水準にあるとはいえません。主要な魚種について、生産の推移をみると、ニシンとイワシの割合が戦前著しく大きかったのに対して、戦後は激滅したことです。ニシンがすでに戦争の始まる直前にはかなり減少しているのに対して、イワシ類は戦争直前にかけて急増しています。戦後の30年前半にかけては、アジ類、サバ類、サンマ類、イカ類そしてイワシ類が中心でしたが、その後40年代後半では、スケトウダラが群をぬいており、サバ類、イカ類が続いています。
このように魚種別生産量の推移には魚種の盛衰が相当明確にあらわれています。もちろん、水産資源に関する調査、研究が進めばこの原因が解明され、やがては予測や対策も可能になってゆくに違いありませんが、この変化は自然の気まぐれのように受けとられています。
水産物の生産変化は長期的には私達の嗜好を変えてゆくに違い有りません。しかし短期的には嗜好は容易に変化しないため、需給の間にギャップを発生させます。また、私達の水産物に対する嗜好は、水産物の供給だけの影響で変化するものではありません。他の食糧や他の商品の供給の影響や消費者独自の理由でも変化します。そうすると自然に多くを依存する水産供給は、その需要との間に長期的にも大きなギャップを発生させることになります。これらのギャップの帰するところは、水産物の価格変動ということです。
水産物価格は他の物価に比べて著しく高騰をしています。卸売物価総合は昭和48年から49年にかけての、いわゆる狂乱物価の時期に急騰したのに対して、水産物価格はほぽ直線的に上昇しています。一方で急増している輸入水産物は水産資源の国際環境を背景に国内における需給ギャップを埋めるべく急速に増加していますが、それにもかかわらず、価格面では国内産地価格の引き上げや高級品の多いことや輸入相手国の事情などもあってかなりの上昇となっています。このように水産物の価格は、産地価格およぴ輸入価格のいずれも高騰しているので、消費者側の購入価格も高くならざるをえません。

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