食糧自給率

日本の食糧を自給率から見ると、その値が極端に高いものと極端に低いものとに二分されます。自給率の高い品としては、米、野菜、果実、鶏卵、牛乳および乳製品、肉類などがあります。自給率の低い品目は小麦、大麦および裸麦、大豆、砂糖があります。濃厚飼料も食糧ではありませんが、自給率は低くなっています。日本の食糧自給率がこのように二重構造を明確にしてくるのは、高度経済成長が進み、農産物輪入が増加してきた昭和40年に入ってからですが、それ以前から、またあるものについては、戦前から、このような傾向が認められるのです。その主な理由については、日本の食糧が自給率の点で二重構造をもつようになったひとつの原因として、風土的条件があります。日本は東アジアのモンスーン地帯に属し、雨量が多いため、水稲作に適しています。温援な気候は野菜の生産に有利であり、多くの丘陵地は果樹栽培を促しています。畜産は日本の伝統的産業ではありませんが、豚や鶏のような中小家畜の飼養は場所をあまり必要としないので、畜産物需要と飼料供給さえ確保されれば、土地の狭い日本に向いているといえます。

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牛、特に乳牛の頭数増加は戦後著しいものがありますが、日本が土地の点で粗飼料の供給に制約のあることを思えば、一見不思議に感じますが、軍用ならびに使役用の馬が戦後減少したために、その分だけ牛が増加したのです。牛馬の合計頭数は昭和10年で308万頭、昭和49年で372万頭で、大家畜は実質的にはあまり増えてはいないことになります。最近では、乳用牡牛を濃厚飼料中心に肉用に肥育して、土地の制約を回避しようとしています。他方で、砂糖キビやビートは沖縄や北海道以外の日本では必ずしも有利な作物ではありません。戦前は植民地であった台湾から移入してきましたが、これを輸入とみなせば、砂糖の自給率は昭和10年ですでに15%でした。同様に、満州を中心に輸入していた大豆は、昭和10年で自給率が33%でした。また濃厚飼料に対する需要は戦後急増したのであって、農地の制約がこれの輪入へ導いたと思われます。
しかし、小麦は戦後特にハード系の品種ヘ、外麦に対する需要が増加したため、自給率が低下しましたが、内麦の滅産もそれを促進したと考えられます。大麦および裸麦の自給率は、昭和5年に107%でしたが、昭和48年には10%まで落ち込みました。自給率の低下は風土的条件にのみに帰するわけにはいきません。
風土的条件といっても、それは生産費を下げるという経済的条件と結びついてはじめて自給率に意味をもつのです。しかし、生産費は自国および外国の技術水準と経営形態に左右されるために、自給率と風土的条件との関係は長期的には相対的なものといわなければなりません。
日本の米は世界的に生産量の多い外米とは味が違っています。野菜、果実も最近は洋風化が進んでいるとはいえ、まだ在来の消費形態が保存されています。特に果実は日本特産の温州ミカンがその消費の半分を占めている状態です。畜産物でも牛肉などは和牛に対する需要が依然としてまだ高く、このように食糧消費はその国の嗜好に強く支配されているため、品名は同じでも、日本のものと外国のものとは内容が必ずしも完全に一致しない場合があります。この場合、日本人が外国のものに慣れるか、外国が日本人好みのものを作るかいずれかをしなければ、輪入は進展しません。さらに商品の単価の問題を考えてみなくてはなりません。日本は食糧をほとんど国内で消費してしまい、輪出することは少なく、輸入した食糧原料を加工して輪出できれば、原料価格が高くても、貿易上バランスがとれるということもありますが、それができないため、日本の食糧輪入は国際収支の制約を受けることになります。もちろん国際収支は貿易だけで決まるものではありませんが、両者に密接な関係が支配しているということは確かです。食糧の輸入金額ないし総輸入額に占める食糧の割合が漠然とではありますが制限されていると、その枠のなかでより多く輸入されるものは単価の比較的安いものになる傾向があります。単価の高いものは輸入数量が小さく、国民全体の効用を高める役割は単価の低い食糧のほうがより多く果たしています。自給率の高い食糧は低いものより概して単値が低いため、このことが食糧を自給率の点で二分した一つの理由であろうと推定されます。しかし、このような二分割は経済合理的になされているのではなく、政策的意図が背景に隠されていると思われます。

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