総合自給率

食糧は個別品目の自給率という観点からすれば、二重構造をもっているといえます。しかし、この状態のままで食生活の多様化がさらに進行してゆけば、この二重構造はバランスを失ってゆく可能性があります。畜産物の自給率は高いのですが、畜産に必要な濃厚飼料の自給率が低いため、食生活の多様化によって動物性食品の消費が進めば、畜産は濃厚飼料の輸入促進によって、ますますその自立性を失ってゆくこととなります。濃厚飼料は穀類、糟糠類、油粕および魚粉類などを含んでいますが、例えば糟糠類の麸や油粕類の大豆粕などは、原料が小麦や大豆で自給率が極めて低いものです。しかし、麸を生産する製粉業や大豆粕を作る製油業は国内にあるため、麸や大豆粘それ自体の自給率は高く、これらの消費が増加すれば、原料需要を通じて小麦や大豆の輪入が増加することになります。

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小麦や大豆はもちろん小麦粉や油脂類の直接的消費の面からも輸入が増加します。小麦はまた同内生産の低下によっても輪入が進み、同様に大麦および裸麦もビールなどの消費の面からばかりでなく、国内の減産によっても自給率を落していきます。砂糖の消費も食生活の多様化によって増加し、その輸入は増えていきます。他方で自給率の高い果実は、消費が異国趣味の方向へ多様化してゆけば、輪入が高まります。野菜と米の輸入は容易に増加しないと思われますが、野菜の消費は増加の限界に近づいており、米の消費は減少しているため、これらの自給率の高さは他の食糧の自給率の低下を相殺することにはなりません。食糧消費と国内生産とのこれまでの傾向を将来へ延長して考えると、自給率の低い食糧の消費におけるウェイトが高まり、食糧は全体として自給率を低下させてゆくことになります。食生活の多様化や国内生産の減退がいつすで続くかは別としても、食糧自給率は個別品目についてばかりでなく、全体についても計算する必要があります。それは食糧全体の需給バランスを展望する上に必要な指標となります。それを総合自給率とよびます。
総合自給率を計算するにあたって注意すべきことがふたつあり、第一に個々の食糧の生産および消費を合計するために、それらをある共通の単位で換算しなくてはなりません。第二に、重複計算を回避しなくてはなりません。例えば濃厚飼料の原料は多くの場合農産物で、これが畜産物に投入されるために、この部分は予め控除しておかなくてはなりません。
個別商品の生産、消費を合計するために、いかなる単位を採用するかによって、総合自給率の値もまた変わってきます。政府が発表する総合自給率は全額換算によるものであって、単位としては卸売価格が使用されています。生産、消費、貿易などを経済全体の立場から産業間で比較する場合に、この指標は役立つに違いありません。しかし、採用すべき卸売価格の基準年次をいつにするかによって、その値は姿わってくるのであって、その点で基準年次の選択はその使用目的に応じて吟味されなくてはなりません。その上、金額換算による総合自給率は日本の場合、ある種の錯覚に導く可能性があります。それはすでに述べたように自給率の高い食糧は単価が高く、自給率の低い食糧は単価が低いという事実に基づいています。このような単価を基準に食糧を金額検算した場合、総合自給率は高い値を示すことになります。
食糧生産は直接的に、または間接的に土地に関係しているので、食糧の生産、消費を合計する場合、その共通単位として農地面積が採用されてもよいはずです。この計算はまだ完全にはなされていませんが、主要な農産物についてはある程度試算がなされています。ここで問題になることは、輪入農産物の土地換算です。輸入農産物は輸入相手国の農地で生産されたために、実際の使用面積を求めるなら、輸入量を単位面積当たり収量で割ればよく、単位面積当たり収量は一般にはその国の平均値しか得られず、輪入先の地城まで追求することはできません。これは止むをえないこととしても、輪入相手国の使用面積は直援、日本の農地面積と比較できるかどうかという問題が出てきます。日本の農地と合計するためには、土地は日本の単位面積当たり収景で割らなくてはなりません。この場合発生する困難すべての輸入農産物が日本で生産されているとは限らないため、その日本における単位面積当たり収量が得られない場合があるかもしれないということです。また畜産物は飼料へ換算され、これがさらに農地面積へ加算されます。水産物はそれが提供するタンパク質をアミノ酸組成を考慮して畜産物に置き換えることができます。畜産物は飼料を介して農地面積へ還元されるため、水産物を土地へ換算することが可能です。なお、総合自給率についてはエネルギー換算の方法があり得ますが、まだその成果はみられません。

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