食糧貿易

日本の食糧需給率は外見的には二重構造を維持しながらも、総合的には次第に低下Lしてきました。しかし、世界の食糧および資源の需給関係が安定していれば、このような自給率の低下は必ずしも悪いことではありません。一定産業に特化することによって発生する農業問題や環境問題を別にすれば、特化によってもたらされる高い経済効率は経済成長を促進します。したがって、食糧自給率の在り方は環境問題に加えて、世界の食糧、資源問題の方向いかんによって判定されます。日本の農産物輸入は総輪入額の二割前後を占めており、この関係は農産物の国際価格が高騰した昭和48年以降も変っていません。同じ年に石油価格が高騰し、世界は共通のインフレ状態に陥ったために、農産物の相対価格は名目価格ほどには変化しなかったからです。しかし、農産物価格と石油価格とが常に相関関係を保って変化するとはかぎらないため、農産物の輪入金額が大きな数量増加を伴わずに昭和47年から49年にかけて二倍になったという事実は注目されます。

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農産物の個別品目についてみると、数量的には自給率の低いものの輪入が概して大きいわけですが、これは価格が相対的に低いため、全額としては数量ほどに大きいウエイトをもっていません。これに反して、畜産物や果実は自給率が高いため、輸入数量はあまり大きくはありませんが、全額は、輪入農産物全体のなかでかなりの割合を占めています。同じ農産物の輸入国でありながら欧米諸国が国際価格の近年の暴騰以前にすでに、日本より相当高い輪入金額をみせていたのは、この輸入品目の相違からくるものでした。その点では農産物輸出国であるアメリカが農産物を全額として日本以上に輸入していることは同じ理由に基づいています。
他方で日本の農産物輪出はきわめて低く、総輪出額の約2%です。生糸は食糧ではありませんが、戦前は輪出の主流をなしていました。化せんの登場や他国の進出によって輸出は激滅し、むしろ輪入国へ転じています。農産物輸出はミカンなどの特殊なものに限定されており、これも常に他国に蚕食される危険を含んでいます。また、日本の洋風食品も伝統食品も国際性を完全に達成していない現在、加工食品の輪出にも限界があるといわざるをえません。
水産物は遠洋漁業が一種の輸入であるという見方を別にすれば、その輪出は日本の総輪出額の約2%以下であるとはいえ、日本は世界第1位の水産物輸出国であるといえます。しかし、経済水域200カイリ登場により、遠洋漁業はその沿岸国との合弁会社の設立などを余義なくされ、次第に現地生産へ転換せざるをえなくなっています。さらに、国内の強い高級魚需要はその輸入を促進させているので、昭和48年には水産物輸入がその輸出を全額において上回り、輸入総額の2%以上となり、アメリカについで世界第2位の輸入国になりました。
日本の農産物輸入はその半ばを北米、特にアメリカに仰いでいます。次が東南アジアですが、その割合は年々低下して、代わって大洋州や南米のウェイトが高まっています。一次産品の輪出を経済発展の推進力にしようとする開発途上国にとっては、日本が先進国として農産物を輸入することは望ましいわけです。特に地域的な経済圏を考えた場合、日本の農産物輸入における東南アジアのシェアはもっと拡大してしかるべきですが、実際には農産物の生産力や供給の安定性などから、むしろ先進国の日本への農産物輸出の方が大きな役割を示しています。

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