農民経済の不安定と土地所有

小農の生活の安定と向上は、どれだけの所得を得るかに依存します。資本主義の発達が末熟な段階にある国では、国民経済に占める農業部門の割合は非常に高いため、小農の所得は農業部門に全面的に頼らなければなりません。発展途上国の場合がその典型です。小農が入手する農業所得の大きさは、まず農業生産力の水準の上下により、第二には小農が耕作する土地の総産出高からどれだけ分配を受けるかによって決まります。小農経済では農業生産力の水準と、分配の割合とは密接に関連することが多く、それは農業総産出高を地主と小作農民とが分け合うような制度のもとで、しかもその分配率が耕作者である小作農民に著しく不利であれば、小農は農業経営を発展させようという動機に乏しく、またその意欲をもったとしても農業に投資する資本を蓄積する経済余剰が生み出せないからです。その結果、大量の低所得、不安定な小農を生み出すことにつながります。

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このような地主小作制度のもとで小農経済を改善するために必要なことは、小作農民の分配率を高くすること、いいかえれば小作料を安くし、耕作権が安定するような土地制度に変えることです。しかし、こういう社会では現行の地主、小作制度のままで分配率を大幅に変え、耕作権を安定させることは非常に難しく、そのために画期的な方法として土地改革が行なわれます。耕作者でない地主が農地を所有していて、実際の耕作者である小農から小作料を取る土地制度を寄生地主制とよんでいます。これに対して小農が自分の耕作する農地の所有権をみずから所有している農地制度は農民的土地所有制度とよばれています。
土地改革は非常に単純化していえば、寄生地主制を廃止して、農民的土地所有制を実現することです。土地改革はひとつの社会改革であって、その内容と実行はその国の政治過程における各社会階級の勢力配置によって左右されます。土地改革がその国の土地所有に関する制度的条件をどの程度かえるかによって、その社会改革的効果も異なります。つまり農業構造がどの程度改革されるかが異なってくるの である。土地改革が国の政策としてとりあげられる場合に、これを評価するには政策の社会的側面と経済的側面の両面に分けて考えたほうがよく、社会的な側面というのは土地所有の配分の不公正とそれに起因する所得分配の不公正を改善することであって公正の問題です。何をもって公正と考えるかは、社会的価値判断あるいは社会的選択の問題です。
経済的な側面というのは、公正の問題を改善した結果から期待される経済効果のことであって、農業生産の効率の問題です。しかし、かりに公正が実現されたとしてもそれが直ちに効率の向上に直接的に結びつくとは限りません。土地改革は発展途上国の構造問題解決の第一着手として行なわれることが多く、それは発展途上国の専売ではありません。第一次大戦後は東ヨーロッパ諸国を中心に土地改革が行なわれ、第二次大戦後には日本で大現模な徹底した土地改革が実施されました。南ヨーロッパ諸国でも土地改革が重要な問題となっています。
これらの諸国は中進、先進国に属しますが、共通点はその国の改革前の農業構造が地主、小作制度を基礎にした小農制であったことです。この農業構造は分配の公正の観点からみても、生産の効率の点からみても好ましくないものとされ、構造改善の第一着手として寄生地主制という社会関係の枠を取りはずして、農民的土地所有を実現することが主要な政策目標となったのです。

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