農業生産組織

農業の技術的不利を克服するために農業機械の装備が行なわれます。そこで高度化した農業生産力と小農的構造との間に新しい矛盾が発生します。それを専用作業機械の導入による高度機械化段階での経営規模と機械の効率的稼動規模との矛盾としてとらえることができます。その意味は、専用農用作業機械は、作業機ごとに適正稼働規模が異なるために、一戸の経営が高度な機械化体系を装備しようとすると、どれかの機械はその経営の規模に対して能力過小であり、他の機械は能力過剰となります。その結果、一戸ですべての必要な能力規模の機械をそろえようとすると、どうしても過剰投資が大きくなるということです。この矛盾を小農的構造を維持したままで解決する方法として、機械の共同所有個別利用、共同所有共同利用、他の経営への賃耕の委託、受託、農協など団体所有機械の共同利用あるいは作業委託など団体、施設の所有と利用をめぐる様々な形態の小農経営間関係が成立します。このうち、機械、施設の利用を媒介として小農の経営間に生産労働の補完関係が結ばれるものを農業生産組織とよんでいます。

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この生産組織をとらえるために農林省統計情報部は、次のような生産組繊の型を設定していますが、これは生産組織にどういうものがあるかを概観する上で便利です。
共同利用組織とは農家集団が、その参加農家の出役によって機械、施設を共同利用するか、または集団の特定オペレーターが参加メンバーの農作業を代行するものです。
集団栽培組織とは地緑的農家集団が、栽培品種の統一、播種、施肥、水管理、防除、収穫などの時期の統一、関連作業の共同、機械施設の共同利用を集団として行なうもの。
畜産共同組織とは畜産に関する土地、機械施設の共同利用および繁殖、育成を共同で行なう組織。
受託組織とは農業協同組合、農業生産法人、農家集団が受託主体となって農作業を全面または部分的に請負い一定の受託料をうけとる組織。
生産組織統計をみる際に注意しなげればならないことは、実態がきわめて流動的であるということです。例えば共同利用組織には共同所有個別利用、つまり機械を共同で買って共有としていますが、使うのは各自が順番に個別に利用するというものは入らないことになっています。しかし実際には、補助融資制度を利用するために、○○機械利用組合という組織を作り機械を購入しますが、実際には個別利用をするもの、また初期には共同利用をしていましたが、あとになって共同利用組織がうまく運営できず共同所有の形だけ残って利用は個別というのもあります。その場合でも、たて前は機械共同利用組織として残っているので、この種のものが調査の場合に共同利用組織に入ってくる可能性があります。特に稲作生産調整が行なわれてから共同利用組織が強固であった稲作地帯でも専業農家が非農業兼業に出るようになり、実際の共同利用は行なわれなくなったという例もみられます。そこでも共同利用組織の名前は残っていて、個別利用だと分かるものもあります。
家族内協業に依存していた時期の小農経営は、家族労働の補完として、手間替、共同作業の地縁的あるいは血縁的な結合組織による伝統的作業慣行に支えられて営まれていました。この伝統的慣行と現在の生産組織などによる作業過程の外部依存とは性質が異なるものと考えられます。伝統的な慣行は家族内協業を補完する組織でした。そこでは小農の家族内協業が主体であって、それを農繁側に補う地緑的、血縁的組織が伝統的な作業慣行を行ないました。しかし、現在では家族労働力の非農業への流出によって、小農の特徴であった家族内協業による圃場や作物の管理や収穫作業を十分に行なうことが難しくなってきています。そこで家族内協業の代わりに外部の機械施設で装備された労働力に何かの形で依存しなければならなくなってきました。
その必要が各種の生産組織の形成となってあらわれたのです。つまり、これらの生産組織は、小農個別経営の外部にあって個別経営の家族労働力を代替するという役割をもってきています。生産組織だけではなく、個人的に農作業を他の経営に委託する場合もまた同じです。ある地方では農業請負作業を専門的に受注する農業的サービス業が成り立っています。
この外部依存は農家の意識として一時的なものではなく今後相当期間依存する予定とするものが圧倒的に多くなっています。これらのデータからいえることは、日本の稲作経営ではすでに家族内協業の代替としての外部依存作業方式が専業的な、経営規模の大きい経営にまで一般的になっており、しかも構造的に定着し、日本農業の制度的環境となっていることです。つまり日本の農業生産力が、この形態なしでは維持できなくなってきているということを示しています。家族経営的小農の本来の姿である家族内協業が崩壊して外部依存なしでは生産力を維持できなくなっている状態は家族経営の空洞化あるいは家族経営の形骸化とよばれています。この家族経営空洞化の事実を認めて、むしろこのような個別経営の外部依存関係を地域単位に計画的に組織化しようという考えが出てきました。地域農業の組織化、地域農業のシステム化などとよばれているものがそれになります。特に大規模施設、機械を基盤とした広域の組織化アイディアは農業の装置化とシステム化とよばれています。
いくつかの機関が構想を発表し、国の農政でも広域営農団地総合整備事業などにその考え方が取り入れられています。地域農業のシステム化というのは、地域内部の農業部門の経済運営には、小生産者相互の市場競争をある程度制限して、原料の購入、部門や品種の選択、技術導入、農業の労働行程、販売などについて個々の農家の自由な選択をある種の機関が制御し、地域内の土地や水の利用にも規制を加え、その地域の農業生産、販売全体の経済活動を計画化しようということです。つまり地域農業の経済運営について市場競争原理の働きを一部制限し、計画原理を一部導入しようとします。それは地域間競争において有利な地位を占めようという考えと、もうひとつは非農業部門の独占体制に小農が対抗するために、地域単位の社会的制御機構を作るという意味とがあります。それは地域内部の経済運営については分権的意志決定方式に制限を加え、ある程度集権的決定システムを導入しようということです。この方式は本来自作農的家族経営を中心とする小農的溝造の社会における経済運営とはなじまないものでした。自作農的家族経営が空洞化したといっても、農家の小生産者的、小資産家的意識と行動様式はあまりかわっていません。構想と現実との格差はなお大きいといわなければなりません。

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