農業と外部効果

鉱山や工場の排水が農業用水を汚染して、下流の農民に大きな被害を与えている例は明治時代からありました。足尾銅山から流れる渡良瀬川流域の農村は、小説や劇で有名です。水質汚濁による農業用水の被害は、鉱山よりも工場排水と都市汚水が中心です。この被害は農業生産の主体が非農業部門の経済活動である工場や都市生活の廃棄物の影響を直援にうけて、作物の収量が低下したり、カドミウム汚染のように生産物を捨てなければならなかったりして、経済的損害をうけるものです。このように、ある経済主体の活動が他の経済主体の活動によって、直接に経済的不利益を被ることを外部不経済効果といいます。直接にというのは、市場での交換を経ないでという意味です。それは農産物を市場に出荷して、市場での値下りのために損をしたという場合とは異なるということです。新しく道路ができて出荷が便利になり野菜が有利に売れる。土地改良工事のために労力が節約できて生活費が少なくなったという場合には、農業生産主体は、他の主体の活動によって直接に利益を得ます。これを外部経済効果といいます。この直接にというのも市場を経ないで利益を得るという意味です。外部経済、外部不経済を一緒にして外部効果といいます。

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このような外部効果は、それ自体がなにかの制度によって作られた組織の活動結果による場合もあるし、もう少し広い意味の地域経済運営の結果である場合もあります。これらの外部効果は、多かれ少なかれ小農経済に利益または不利益をもたらすこととなります。つまり、小農経営にとって外部経済または外部不経済効果を持っています。それは、間接に小農の分化、分解にも影響を及ぼします。例えば都市汚水の農業用水流入によって、その用水を使っている田の稲作反収が低下する場合には、農家の兼業化を促進するかもしれません。
外部効果の一般的な定義は、ある経済主体の活動が他の経済主体の活動によって影響をうけることです。しかしこの定義は一見奇妙に見えるかもしれません。どんな経済活動も現実には、他の経済活動と相互依存関係にあるために、ことさらこのような概念をもち出す必要はないように思えます。たいがいの概念規定は、その定義が始めて使われたときには具体的な内容と直接のかかわりをもって定義されることが多いので分かりやすいのですが、それが洗練され、抽象化されていくに従ってスマートにはなりますが、分かりにくくなるものです。
内部経済とは、個々の経営内部で、経営規模の拡大によって経営内分業にもとづく協業や機械の利用で費用が節約されることをいいます。外部経済とは、ある地域に関連産業が集中立地することによって、相互に経済活動を補完し合い、ひとつずつの企業の規模は小さくても、同種の小企業が同一地区に集積することによって分業のもたらす経済効果が補完し合い、各企業が費用を節約できることをいいます。つまり同じ地域で同種の生産物の集計量が増大すると、近隣に補助産業が起って道具や原材料を供給し、流通を組織化して個別企業の費用が節約されます。
外部経済上そして外部効果にもとづく個別企業の費用増大を意味する外部不経済という用語は、経済学理論の発展の中でマーシャルが使ったものとは多少異なる意味に拡張され、新しい装いをもって使われるようになりました。特に外部不経済という概念は環境汚染と関連する経済問題を扱う場合にしばしば登場するようになりました。現在の用語では外部経済は物的な外部経済あるいは、技術的外部経済と金銭的外部経済とに分かれます。

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