農地を売買するときに注意することは

 小学校の教員をしているAは、父が急に亡くなり、遺産として六〇〇万円をもらうことになりました。
 毎朝、すしづめの電車で通うたびに、せめて、学校の近くに家がほしいと、かねて考えていました。
 そこで、Aは、この金を元にして宅地を買うことにきめました。さっそく、学校の近くの土地、建物会社へ、手頃の宅地をさがしてくれるように頼みました。四、五日たつと、一九八平方メートルばかりの候補地があるとの知らせがあったので、放課後、建物会社に寄って、現地を見せてもらいましたが・・・

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 なるほど、学校からは二〇分ぐらいの町はずれにある便利なところですが、野菜が作ってありました。会社では、土地台帳の地目が山林であり、いますぐにでも、野菜を採ってしまえば家が建つとのことでした。値段は、三・三平方メートル当たり二〇万円。手付けとして三〇万円を払って約束しました。
 Aは、待望の宅地も目ぼしがついたので、狭いながらも、わが家の設計にとりかかり、あれこれと、建築の手配を進めました。
 一方、地主であるBという農家でも、ちょうど、娘の縁談がまとまり、近くご祝儀をあげることになっていたので、まとまった金がほしいため、話はトントン拍子。売買の約束ができました。
 ところが、その後三日目、会社の方から、あの土地は市街化区域に接した調整区域にある農地であるから、農業委員会の許可がなければ、所有権の移転登記ができないとのことで、三か月ばかりまってほしいという知らせがありました。
 これは大変。手金は払ったが、土地はいつ自分のものになるのか、これから手続きをするといっても、いつのことやらわからず、Aは全く途方にくれてしまいました。
 すべて農地は、農地以外のものにする目的で(つまり農地をつぶすこと)、売買(所有権の移転)するには、当事者(地主と買い手)が、前もって、農業委員会の許可をうけなければなりません(農地法五条)。
 この許可をうけないで売買しても、効力がないから(同三条四項)、登記できません。
 許可をうけずに、売ったり、つぶしたりすれば、農地法違反として処罰(同九二条)されることになっています。
 それでは、本件の場合ぜんぜん打つ手がないかというと、必ずしもそうではありません。ではどうすればいいかということになるのですが、この場合は、売買による所有権移転請求権保全の仮登記をしておけばよい。
 つまり、農業委員会の許可があったら、そのとき完全な所有権移転の登記をするという仮登記です。
 それをしておけば、会社が第三者に二重売買しても、その人に対抗できるし、また仮登記があれば、その登記を見た人は、その土地を買おうとはしないから安心して許可を待つことができます。

田舎暮らし

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