無料で貸しても小作地になるか

 A君は、大宮市の郊外に住んでいます。父が二年前に東京で繊維問屋を手広く営んでいたところ、不況で倒産寸前になったので、財産を整理してしまいました。
 このため、A君の名義になっている大宮の邸宅も半分になってしまいました。
 約三〇アールもある宅地つづきの野菜畑は残ったが、雇人をおかなくなったので、自家で作るわけにいかない。
 A君は、商事会社に勤めているので、暮らしに困るわけではなし、いま野菜畑を売るつもりはありません。それに、もう四、五年もたてば、周囲も住宅化して、三・三平方メートルー〇万円以上には売れるだろうと、ひそかに期待もしていたが・・・・

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 そこで、安易に考えました。ただでもいいからだれかに貸して、確保しておきたい。幸い、近所に農家があったので、さっそく、かけ合ってみたら、二つ返事で、ぜひ作らせてくれ、というわけで、貸しておいたわけです。
 ところが、昨年、小作地の一斉調査があって、A君の野菜畑は、使用貸借関係があるから、小作地であると登録されてしまいましたた。
 農家のほうでは、誰かに知恵をつけられたとみえて、昨年の暮、A君の出張中、お歳暮といっしょに、「これは、ほんの志だが、地代がわりに」といって、五〇〇〇円の商品券をもってきた。奥さんは、それを気軽にうけとって、妙なことだと思ったが受取りを書いてそれを渡してしまいました。
 A君は、それも聞き流して過ごしましたが、最近、友人から野菜畑の一部を宅地に分けてほしいという話があったので、そのつもりになり、農家へ「一〇 アールばかりよそへ売るから」と一応念のため断わりに行ったところ、小作地の解約は知事の許可がなければできないし、農地の転用ということになるからと、断わられてしまいました(農地法二条、四条、五条、二〇条)。
 このように、農地法では、ただで貸してある農地でも、小作地とみなされるし、まして金銭とみなされる商品券を受けとって、領収証をだしてあるということであれば、小作料をとっている小作地と解されるのです。
 これを壊すには、農業委員会へ許可申請するとともに(農地法二〇条)、おそらくこの農地は市街化区域にあると思われるので、転用行為に着手する日の四〇日前までに、農業委員会に転用届出書を提出しなければなりません。また相手に対して、畑の作物を収穫してつぎの耕作にうつる六か月前に、もう貸さないという通知を出しておかなければなりません(民法六一七条)。この通知は、後日紛争となったとき、そんな通知は貰った覚えがないと主張される心配があるから、内容証明で正式にだしておく必要がある。
 それでも相手が耕作地を返還しない場合は、裁判所に対して農事調停を申し立てて、その耕作地を返還するよう調停して貰うほかありません。

田舎暮らし

農地を売買するときに注意することは/ 農地を宅地に変える/ どういう場合に農地をつぶしてよいか/ 地主が小作料を受領しないときは/ 無料で貸しても小作地になるか/