農地の担保化

農地は戦前からその取引について統制が加えられ、農地を耕作以外の目的に供する場合にかぎらず、耕作目的のために所有権等を譲渡する場合についても地方長官の許可を要すとされていましたが、戦後もその方針が踏襲され、農地調整法の改正で、全ての場合について地方長官の許可がなければその譲渡は無効であるとされました。
現行農地法は、農地について、所有権を移転したり、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権、その他使用取益権を設定、移転したりする場合には、当事者は都道府県知事の許可を受けなければなりません。農地転用の目的で前記三条の所有権の移転、使用取益権の設定、移転をした場合にも都道府県知事の許可を受けなければなりません。そしてこの許可を受けないでした行為は、その効力を生じないとしています。ただし、許可の除外例もあります。

スポンサード リンク

田舎暮らし

知事の許可の法律上の性質については、農地についての権利の設定、移転を目的とする行為の成立要件でなく、法定の効力要件であるとされています。したがって知事の許可を受けないで、農地について所有権移転、賃借権設定等をしてその登記申請をしても、登記所によって受理されません。
そうすると農地に担保を設定する場合にもすぺて知事の許可を必要とするかについて、以下のように考えることができます。
日本の民法上不動産についての担保物権は、質権と抵当権ですが、その他に、買戻、再売買の予約、譲渡担保、代物弁済の予約がいずれも担保的機能を有するとされています。
質権は債権者が担保として債務者または物上保証人から受け取った物を留置し、債務の弁済を強制するとともに、弁済のない場合にその物の交換価値から優先的に弁済を受ける種類の担保物権であり、ことに不動産質権においては、儀権者が目的物を使用取益してその収益をもって被担保債権の利息に充当するものです。よって農地について質権を設定する場合には、使用収益権の設定を伴うので、この行為については知事の許可を得なければその効力を生じません。
不動産の売主が将来買戻のできる権利を留保して売買をした場合、買戻し権を行使すれば、最初の売買は解除され、不動産の所有権が売主に復帰する効力を有するものです。例えば甲が乙から融資を受け、それと同額で乙に対し所有不動産を買戻特約付で売り渡し、その買戻期間内に乙に債務を弁済して買戻をするという担保の目的で利用されることが多くなっています。それゆえ農地について担保の目的をもって買戻特約付で売買した場合、実質はあくまでも売買であるために、知事の許可を要することはいうまでもありません。そして買戻権を実行した場合にも所有権の移転を伴うので、買戻しについて知事の許可を得ないと買戻の効力を生じません。ただし買戻し期間中に買戻権の行使がなされた以上、知事の許可が買戻期間経過後であっても、その許可があったときに所有権は適法に買戻権者に移転します。
再売買の予約とは目的物を再度売買することを予約してする売買であって、一旦目的物を売り渡して金融を得、後日予約完結権を行使して目的物を買い戻し、代金を返却することによって担保の目的を達しようとするものであり、買戻と同じく担保の機能を有します。したがって農地について担保の目的で再売買の予約をする場合は、一旦買主に所有権を移転するので、担保の目的でする当初の売買について知事の許可を得ないとその効力を生じません。そしてまたその後において予約完結権を行使すると、再び売主に所有権が移転するので、その場合には改めて知事の許可を得ないと売買の効力を生じません。この場合も再売買の予約完結の意思表示をした後、これに基づく所有権移転について知事の許可を得れば足りることになります。
譲渡担保は担保設定者が、担保権者に対し債権担保の目的をもって目的物について所有権の譲渡を行ない、同時に担保設定者に対し担保物を利用して使用収益し得る貸借関係を設定するものです。この場合にも所有権の移転を伴うために、農地について譲渡担保設定をすれば、知事の許可を受けないとその効力を生じません。
ただし、以上のいずれの場合でも、担保設定当時農地であったものがその後においてその現状が農地でなくなれば、知事の許可を受けなくともその担保設定の効力を生じます。
抵当権は債権者が債務者または物上保証人から担保の提供を受けても、質権と異なりその使用収益権は設定者のもとに留め、債務の弁済のない場合にその物の交換価値から優先的に弁済を受ける種類の担保権です。そうすると農地について抵当権を設定する場合、使用取益権の設定を伴わないから知事の許可は不要です。
代物弁済の予約は消費貸借の当事者間で、債権者が期限に弁済しないときは、債権者があらかじめ特定の物をもって代物弁済となしうることを予約した場合であって、担保の目的をもってなされます。通常は目的物について同時に抵当権を設定する場合が多く、したがって担保の目的で代物弁済の予約をした場合、この段階では所有権の移転も使用収益権の設定もありません。それゆえ農地について代物弁済の予約をした場合に、知事の許可を要しません。しかし予約完結権を行使してその所有権を取得した場合知事の許可を得ないと代物弁済の効力を生じないことは当然です。
売買の売主または使用収益権の設定者が知事の許可手続に協力しないときは、裁判所に提訴して判決を求めることになります。例えば農地につき譲渡担保を設定したときは、通常は売買の形式でなされるために、被告は別紙目録記載の土地につき原告のため甲県知事に対する所有権移転許可申請手続をなし、かつ許可があったときは原告に対し所有権移転登記手続をせよ。との意思表示を求める訴えを提起し、それが裁判所で認容されて確定すると担保権者がその確定判決をもって単独で知事の許可申請手続およびその後の登記手続をとることができます。
許可の要件は主として農地につき、その所有権を取得し、または使用取益権の設定、移転を受けようとするものが、耕作または養畜を行なうものまたは農業生産法人である場合に限られ、また小作地についてはこれを譲渡したり、質入したりすることは許されないことになっています。
以上のように、実際上農地を担保にとるにしても知事の許可を要する場合が多く、その必要のない抵当権にしても、その実行として競売に付さねばならないために、競落人がその所有権を取得する場合に知事の許可が案件となり、いずれにしても許可の得られる範囲が限定されるので、農地担保の利用はさ程多くは望めません。またそれが農地立法の目的でもあります。

田舎暮らし

小作契約/ 小作人の保護と農地法/ 請負耕作契約/ 農地の売買契約/ 農地法許可後の法律関係/ 農地法の許可を必要としない場合/ 農地の担保化/ 立木の担保化/ 農業用動産の担保化/ 小作料と地価の規定/