農業用動産の担保化

民法では、動産抵当の制度を認めていないので、農業用動産を抵当権の対象とすることはできませんでした。しかし昭和初期の不景気の時代に救農政策の一つとして、農業金融の行き詰りを打開するため、昭和八年に農業動産信用法が制定され、農業用動産の購入等のためになされた資金の貸付債権につき先取特権を定めるとともに、農業用動産につき抵当権を設定する途を開きました。
先取特権とは、法律の定める一定の債権を有する者が、その債務者の財産について、他の債権者に優先して、その債権の弁済を受けることのできる担保物権ですが、民法では、動産の先取特権として、動産保存、動産売買、種苗肥料供給の各先取特権を定め、動産の保存、売買、供給をした者の債権を保護しています。これに対して、農業動産信用法においては、農業協同組合、信用組合、その他漁業組合等が、農業経営者に対し、農業用動産または農業生産物の保存、ならびに農業用動産、種苗、肥料、蚕種、薪炭原木等の購入をするために必要な資金を貸付たときには、その貸付債権の元本および利息について、資金により保存、購入した動産、およびこれにより生産、養殖された物の上に先取特権を有するとしています。つまり民法は、農業経営者に物を売る商人のために先取特権を認めたのに対し、農業動産信用法は、商人からは現金で物を購入させるために、その購入資金を貸付ける者に対し先取特権を認めたのです。この先取特権は、農業協同組合等が農事実行組合、養蚕実行組合、その他勅令をもって定める法人に対し、農業用動産の保存、購入のための資金賃付をした場合にも認められています。

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農業用動産に抵当権を設定することのできる者は、農業を経営している者のほか、農業協同組合、漁業共同組合、農業組合法人であり、また抵当権者となり得る者は、抵当権設定者の所属する農業共同組合、信用組合、または、銀行、信用金庫、農林漁業金融公庫、農林中央金庫、漁業協同組合等にかぎられます。また抵当権の目的となり得る農業用動産も法今で定められており、石油発動機、トラクター、ボイラー、移植機、噴霧機、稲麦刈取機、脱穀機、コンバイン、貯乳タンク、飼料切断機、総トン数20トン未満の漁船、牛、馬、種豚等はこれに入りますが、鋤、羊、豚、鶏等はこれに含まれません。ただし、道路運送車両法による登録の対象となる自動車は、たとえ農業用動産に該当する場合でも、自動車抵当の対象となり、農業用動産抵当権を設定することはできないとされています。なお、この抵当権の対象となるのは、これら個々の動産であり、一体としての動産の集団ではありません。
抵当権の公示方法は特別の登記です。ただし、その効力は民法と異なり、善意の第三者には、登記をしない根り対抗できませんが、悪意の第三者に対しては登記がなくても対坑でき、登記をした後でも第三者の即時取得を妨げることができないとされています。そこで、善意の第三者により即時取得されるのを防ぐため、法は所有者がこれを譲渡し、または、他の債権の担保に供しようとするときには、譲受人または担保権者に対し、抵当権の存在、およびその内容を告知する義務を負わせるとともに、告知した旨を、遅滞なく抵当権者にも告知すべきこととしています。これらの規定は、動産の取引においては、登記の有無まで調査することはしないのが通常であるため、抵当権登記が看過されることを慮って設けられたものであり、罰則をもって、義務の履行を強制しています。
先取特権と農業用動産の抵当権が競合するときには、抵当権は民法三三〇条の第一順位の先取特権と同一の効力を有するその他は滌除の規定を除き、不動産の抵当権に関する規定が準用されます。また、抵当権の実行については、農業用動産抵当権実行令が特則を定めているほかは、競売法の動産の競売に関する規定に従います。ただし、当事者間に特約があれば、任意売却による換価方法を採用することもできます。なお、抵当目的物の毀損については、罰則が設けられています。

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